兵庫県姫路市出身の世界的ファッションデザイナー、故高田賢三さんが最晩年に衣装を手がけたオペラ「蝶々夫人」が7月27日、高田さんデザインの緞帳(どんちょう)がかかるアクリエひめじ大ホール(同市神屋町)で上演される。イタリアオペラを代表する作曲家プッチーニが日本を舞台に描いた名作を、宮本亜門さんが演出。国内外で注目された舞台が、初めて「ケンゾー」の故郷でも披露される。(上杉順子)
高田さんは姫路・野里に生まれ育った。姫路西高を卒業して東京でファッションを学び、後に渡仏して鮮やかな色使いで知られるブランド「KENZO(ケンゾー)」を創業。「色彩の魔術師」と呼ばれた。
80歳を過ぎてもパリで元気に暮らしていたが、2020年に新型コロナウイルスに感染し、81歳で亡くなった。このため、19年初演の「蝶々夫人」の衣装、21年オープンのアクリエひめじの緞帳(大ホール・中ホール)は、最後の仕事の一つとなった。
オペラ「蝶々夫人」は明治初期の長崎を舞台に、没落した士族の娘・蝶々さんと米海軍士官ピンカートンの悲恋を描く。蝶々さんが歌うアリア「ある晴れた日に」が特に有名だ。
今回の作品は東京二期会が企画。宮本さんの新演出により、蝶々さんとピンカートンの間に生まれ、成人した息子の視点から2人の恋を捉え直している。19年10月に東京文化会館で初演後、22年にドイツ、23年に米サンフランシスコでも披露され、評判を呼んだ。
高田さんは生前、「『蝶々夫人』は私にとって憧れのオペラ」と語り、「日本人が見ても外国人が見ても、本物の日本の美意識が伝わる衣装」を目指していたという。蝶々さんの和服やピンカートンの軍服をはじめ、登場人物全員の衣装を担当し、欧米の歌劇専門誌には「とてもきらびやかだ」と称賛された。
姫路公演は姫路市が誘致し、市文化国際交流財団が主催する。7月27日午後2時、アクリエひめじで開演。全席指定で1万2千~3千円。他に学生席(2千円)もある。プレイガイドは姫路キャスパホールTEL079・284・5806