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人命救助の感謝状を受け取る松本裕之さん(左)と橋本秀美さん=加古川市加古川町本町
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人命救助の感謝状を受け取る松本裕之さん(左)と橋本秀美さん=加古川市加古川町本町

 新年の催し中に倒れて心肺停止となった70代男性に心臓マッサージし、命を救ったとして、加古川市中央消防署(兵庫県加古川市加古川町本町)は28日、市内の男性2人に同署で感謝状を贈った。消防関係者が「素早い措置がなければ危うかった」という救命劇。適切な行動をとれた背景には、過去に命を救えなかった苦い経験があった。

 1月8日、加古川市加古川町溝之口の加古川プラザホテル。約100人が参加した氷丘地区年賀交歓会でのことだった。午前11時55分ごろ、関係者のあいさつ中に突然、「ドーン」と音が響いた。

 同市議の松本裕之さん(63)=同町=と、鉄工所経営で市消防団氷丘分団副分団長の橋本秀美さん(53)=同町=が駆け付けると、男性があおむけに倒れており、意識がなかった。

 胸の上下動がなく、呼吸をしていない。心肺停止の状態だった。

 防災士の資格を持つ2人は、男性のあごを傾けて気道を確保。心臓マッサージを始めた。

 男性の呼吸は戻らず、「無理かもしれない」との思いが2人の頭をよぎる。しかし動きを止めず、交代しながら休まず胸を押し続けた。

 数分後、ホテル関係者が自動体外式除細動器(AED)を持ってきた。AEDを開け、すぐに「ショックボタン」を押そうとする人を、松本さんが「あかん!」と制止。男性のネクタイを外してシャツを脱がせ、電極パッドを肩と脇腹に貼った。電源を入れると、「ショックは不要です」と音声が流れた。

 2人は心臓マッサージを再開。すると、胸が自然と上下動を始めた。手を止め、口元を見ると呼吸をしていた。松本さんは男性の胸に手を当て、呼吸しているのを確認しながら消防の救急隊を待った。

 救急隊が到着し、男性を搬送。救急車に乗った同行者から「呼び掛けに応えている」と、意識が戻ったことを伝えられ、2人は安心した。

 男性が倒れてから救急隊が到着するまで、約9分間。2人には長い時間に感じられた。スーツの下に汗がにじんでいた。

 同署によると、心肺停止から何もしなければ、9分後に救命できる可能性は、10%を下回るというデータがあるという。田渊秀樹署長は「2人のおかげで、男性は入院の必要も後遺症もなく、普段通りの生活ができるまでに回復できた」と称賛する。

 松本さんが心肺蘇生に挑んだのは2度目だった。

 約10年前、義父が自宅の風呂で倒れているのを発見。当時は防災士の資格を取っておらず、119番して、電話で消防に教えてもらいながら心臓マッサージをした。「どうしたらいいんだろうと不安に思いながら心肺蘇生していた」と振り返る。義父は帰らぬ人となった。

 松本さんは「きちんと心肺蘇生をしていても義父は手遅れだったかもしれない。でも、あれが防災士の資格を取ろうとしたきっかけの一つになった。あの時の経験が、今回の救命にもつながった」と話す。

 松本さんは2014年に防災士の資格を取り、地域団体や小学校などで救命講習の講師を務めている。「普段、講習で教えているので、その活動を生かせた。助かってよかった」と笑顔を見せた。

 橋本さんも15年に防災士の資格を取得しており、消防団で年2回の救命講習に参加していた。橋本さんは「定期的に講習を受け、知識があったのがよかった。とっさに体が動いた」と話した。

 2人は「救命講習を普段から受けることの大切さを、伝えていきたい」と思いを新たにしていた。(斉藤正志)

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