「生きヘタ?」ニュース
■不妊治療などの心のケアについて臨床心理士の奥田恭子さんに聞きました
10月のテーマは不妊治療や流産や死産を繰り返す「不育症」の患者が抱える生きづらさです。「英ウィメンズクリニック」(神戸市中央区三宮町1)で、カウンセリングを担当している臨床心理士の奥田恭子さん(48)に話を聞きました。
-患者の悩みは?
「なかなか結果が伴わない苦しさや、仕事との両立に悩む人は多いです。妊娠できるかもしれないし、延々と治療が続くかもしれない。治療に対する社会の理解は進んだとは思いますが、急に仕事を休まないといけなかったり、仕事を代わってもらったりすることがつらい、とよく聞きます」
「受験や仕事は、頑張ったことが数値化、可視化できるけれど、そういう意味で妊娠は見えません。治療を重ねても、お金を費やしても、保証されるものではないのがつらいという声もあります。これまで頑張ってきた自分自身の存在が揺らぐほどのしんどさ、だと感じます」
-周囲はどうすれば?
「職場では、本人が何か発言するまでは聞いたりせず、エールのまなざしを送るにとどめるのがいいと思います。話を聞いたときは『頑張って』『大変だね』『どうだった?』ではなく、『うまくいくといいね』『祈ってるよ』などがいいですね」
「治療のことを親にも誰にも言えないという人もいます。そんなとき夫の関わり方次第で、妻のしんどさは変わってくると思います。通院に同行したり、妻の話をしっかり聞いたりし、夫自身も参加しているという態度が大切ですね」
-患者に伝えたいことは?
「治療がうまくいかなかったとき、『電車に乗ったことが悪かった?』などと自分を責める人もいます。でも、妊娠はいろいろな要素が重なって成立したり、しなかったりします。自分に厳しくなりすぎるとしんどくなるので、まずは自分自身をケアすることを大事にしてください。温かい飲み物を飲んでホッとする▽趣味のことをする▽愚痴を言う▽カウンセリングを利用する-など。一人で考えて切羽詰まったり、自分を責めすぎたりしないようにしてほしいです」(聞き手・中島摩子)