「生きヘタ?」ニュース
■あがり症(社交不安症)について兵庫医科大講師の山田恒さんに聞きました
日常生活に支障が出るほどのあがり症は「社交不安症」とも呼ばれる。兵庫医科大(西宮市)精神科神経科学講座の山田恒講師(49)に、治療や向き合い方などを聞いた。
-社交不安症とは。
「突然ですが、例えばクマと遭遇したらどうなりますか? 危険な状況に恐怖を感じて、心拍数が上がるなどの反応が起こると思います。こうした危険回避の反応は人間にとって正常なもの。ただ、恐怖や不安、緊張感が過剰になり、困り事が続くと不安症とされます。例えば、人前で話したり学校で発表したりといった社会的場面を考えてみましょう。苦手でもなんとかできる程度なら良いのですが、つらすぎて気持ちが落ち込んだり、会社や学校を休んだりといった状態が続くと日常生活に支障が出ます」
「社交不安症には医学的な診断基準があります。発症年齢の平均は13歳で、小学校高学年から中学生ごろに多く発症。日本ではおよそ100人に1人くらいの割合とされます。性格の問題と思われがちですが、実際にはうつや摂食障害などの患者の背景に、社交不安症があることも多いです」
-治療法は。
「まず、脳の中で過剰に反応する不安の回路ができていると考えてください。社交不安症は性格だから変わらないというものではなく、治療によって不安を減らす手助けができます。そして、人前に出ることなどを『不安はあるけど大丈夫』と思えるぐらいになることを目指します。治療の一つは『SSRI』『SNRI』と呼ばれる薬による薬物療法で、基本は1日1回服用で効果を見ます」
「もう一つは認知行動療法で、人から注目されて緊張する場面に対処する技術を、患者自身が学びます。優先して取り組みたい治療ですが、日本では自費診療になり、専門的に行える医療機関も限られるのが実情です。そもそも社交不安症の患者は医療機関を受診することにハードルがあると感じることも多いです。まずは自分でできることを本で学ぶことも有効。私たちはまず病気を知ってもらうために、スマホ用アプリを作りました」
-どんなアプリですか。
「精神疾患向け治療用アプリ開発を行う会社『emol』(東京)が開発した『フアシル-S』です。無料で使うことができ、症状や仕組み、緊張を和らげる方法の例などを、キャラクターと一緒に動画などで学べます。まずはアプリで気軽に社交不安症について知ってもらい、困っていることや本当はやりたいのに我慢していることがあれば、医療機関などに相談してもらいたいです」
-家族など周囲はどう向き合えば良いでしょう。
「本人が治療に取り組むモチベーションを持つために、できたことをほめて伸ばしていくことが大切です。行動を変えられるのは患者自身なので、周囲はそれを手伝うことを考えてほしいです」