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■若者の吃音について、言語聴覚士の久保田功さんに聞きました

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吃音のある若者への支援について語る言語聴覚士の久保田功さん=神戸市内
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吃音のある若者への支援について語る言語聴覚士の久保田功さん=神戸市内

 7月のテーマは若者の吃音(きつおん)です。今年3月まで近畿大学病院で言語聴覚士として患者に向き合い、高次脳機能障害や失語症などの患者を支援するNPO法人「りじょぶ大阪」で活動している久保田功さん(65)=堺市=に聞きました。

 -吃音は幼少期によくみられます。

 「なめらかに話すことが難しい『吃音』がある人の割合は、2~4歳の幼児で4~5%といわれます。このうち7~8割は半年から1年間で自然になくなりますが、学齢期以降も続く人が100人に1人ぐらいいます。旧約聖書にも吃音とみられる記述があるほどで、時代を問わず人類にとって珍しくないものなんです」

 「ただ、詳しい原因は分かっていません。主には生来のものであると考えられ、私は『しゃべり方の特徴の一つ。多様性の一つ』というふうにとらえています」

 -学校生活などで悩む人も多いですね。

 「成人してから相談に来た患者に聞くと、幼少期は気にしていなくても『中学生の頃はしんどかった』という人が多い。ちょうど思春期です。誰かにからかわれたり、他人が気になったりすると負の感情が強く出てきます。一方で、この時期は授業での発表や部活動での上級生へのあいさつなど、しゃべらないといけない場面が増えますよね。吃音を隠そうとして悩む人は少なくありません」

 「コミュニケーションをしっかり取るために、吃音でも言いたいことを言う方が良い。むしろ周囲に吃音のことを伝えておけばプレッシャーが少なくなり、スムーズに話せるようになるケースもあります」

 -どう伝えれば?

 「初対面の同級生が増えることが多い中学校入学時に吃音を説明するなら、次の三つを伝えると良いと思います。『これは自分のしゃべり方の特徴なんだ』『吃音というんだ』『(吃音を)気にしたらひどくなると言われている』。正しく伝えれば、理解してくれる人はちゃんと理解してくれます。高校生なら『吃音があって言葉がすっと出てこないことがあります』と簡潔に伝えるだけでも良いでしょう」

 「学校や担任の先生とも、本人がどんな対応を望んでいるか話し合っておくと安心です。しゃべりにくい場面やしてほしい配慮を具体的に書面で伝えることが有効なケースもあります」

 -周囲の理解が支えになるということですね。

 「そうです。青年期は就職や職場でも理解が求められます。特に就職活動の面接は誰でも非常に緊張します。普段は詰まらずに話せる人も、吃音が出やすくなります」

 「就職活動では、初めから吃音のことを伝えて臨むことを勧めます。会社によって対応はそれぞれかもしれませんが、ちゃんと理解してくれる職場に入った方が結果的には良いはずです。多様性が尊重され、社会全体の理解は広まりつつあるとも思います」

 「当事者が吃音を隠さずに周囲とうまくコミュニケーションを取るために、できれば幼少期から、専門家などの適切な支援を受けることが重要だと思います。都道府県の言語聴覚士会などに相談先を紹介してもらう方法もあります。私たちも、小児期から支援できるよう言語聴覚士の研修などに取り組んでいます」

 

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