「生きヘタ?」ニュース
■AYA世代のがんについて兵庫県立大の丸光恵教授に聞きました
1月のテーマは「がんサバイバー」です。当事者インタビューに登場した阪神タイガースの原口文仁選手(31)は、26歳の時に大腸がんと診断されました。15~39歳のAYA世代(思春期・若年成人期)のがんに詳しい兵庫県立大看護学部の丸光恵教授に聞きました。
-15~39歳のがんとは。
「年間で約2万人ががんと診断されていますが、がん患者全体でみると3%。周囲に同じ年代でがんになった人がほとんどいない状態です。『なんで自分だけが、がんになったのか?』という疑問とともに、理不尽さや未来がシャットダウンされたような絶望を感じやすいといえます」
-周囲はどうすれば?
「がん=死、というようなステレオタイプの見方で接しないことが大切です。がんというイメージだけで、周りがざわつくと、『心配をかけたくない』『だから言わないようにしよう』と孤立してしまうかもしれません。治療とキャリアを両立している先輩はたくさんいます。そういった人とつながり、『1人じゃないよ』というメッセージを受け取ってほしいです」
「『AYA世代のがんとくらしサポート』というウェブサイトでは、AYA世代や家族などを対象として情報や体験談を掲載しています。AYA世代が病気だけでなく、将来のこと、生活やお金、家族、学校・職場についてもさまざまな不安を持っていることや、それぞれがどのように折り合いをつけていったのかも具体的に書かれています。病気のことや治療以外でも、周囲ができることはたくさんあることが分かると思います」
-大学や職場に復帰する際、大事なことは?
「診断そのものに対するショックが続いていたり、退院後も外来通院が必要だったりと、体だけでなく、心にもさまざまな影響が続いていることがあります。心身両面への周囲のサポートはとても大切です。病気の影響が大きくなるか小さくなるかは、周囲の対応次第です。例えば、疲れやすくて昼休みに少し横になりたい希望があった場合、別室で気兼ねなく横になっていいですよと言うか、他の人もいる休憩室で過ごしてくださいと言うか。それによって当人の疲労感は変わります」
「誰でもがんになる可能性はあります。その人だけの問題じゃない。『やってあげる』という上から目線ではなく、あなたのがんは私のがん、という気持ちで、同じ立場に立って考える。それができるかどうかで本人が生きづらくなるか、そうならないかを決めていると思います」
-本人の気持ちについて。
「つらく、混沌とした時期があるのは、普通の反応です。なぜがんになったのかという疑問は、大なり小なり持ち続けています。その答えを見つけられるのは自分だけですが、AYA世代のがん患者は1人だけではありません。自分のほかにも同じようなAYA世代患者の存在を知ることがとても大切です。ピアサポートグループや患者会にはいろいろな先輩がいます。それぞれが、自分のペースで、ゆっくり歩んでいけばいいと思います」
「一般社団法人『AYAがんの医療と支援のあり方研究会』では、毎年3月に『AYA week』というイベントを開いています(2024年は3月2~10日)。患者を対象としたオンラインイベントもあります。周囲の皆さんも含め、AYA世代のがんを知る機会にしてほしいですね」