「生きヘタ?」ニュース
■しんどさ抱える子どもの夏休みについて、神戸学院大准教授の難波愛さんに聞きました
部活に塾に習い事と、何かと忙しい現代の子どもたち。「しんどい」と言えないまま、知らず知らず無理していませんか? 「体の不調は心のSOSかも」と指摘するのは、不登校の子どもや家族を支援する「明石みもざ心理相談室」の難波愛さん(53)=臨床心理士、神戸学院大准教授。「何もせず、ゆっくりすることも大事」。そう話す難波さんに、夏休みの過ごし方などについて聞きました。
-子どもたちの「しんどさ」とは何ですか?
「しんどいと言えたり、しんどさを自覚できたりすることはすごいことです。何に困っているのかが分からないまま、つらくなっている子もいます。ヤングケアラーや貧困などの場合、その生活環境が当たり前なので、『自分は人と何が違うのか』『自分は苦しいのか』と自問できないまま、体が先にSOSを出すこともあります。起きられないとか、おなかが痛い、体がだるいとか…」
-周囲は、子どものSOSをどう受け止めればいいですか。
「体がしんどいと聞けば、まずは小児科に連れて行くでしょう。でも、そこで体の病気が見つからなかったら、心が疲れていると考えて、休ませることが大切です。体と心は一体。体の状態と心の状態を近づけて考えてください」
「ゆっくりすることはすごく大事です。基本、休ませる。今の小学生や中学生はとても忙しいです。部活や塾、習い事がいっぱいなら、休んでぼんやりすればいい。何もせずにボーッとしていると、心が穏やかになります」
-今、夏休みです。どんなふうに過ごせば?
「おうちにいて何にもしない日があっていいし、自然の中に出かけてボーッとしてもいい。歩いたり、川遊びしたり、少し体を動かしてみるのもいいかもしれません。自分の内側から『やりたい気持ち』が湧いてくるまで、ゆっくりしましょう。時間はかかるけれど、いずれ湧いてきます」
「植物をイメージしてください。例えば、ミニトマトの場合、水をあげて肥料をあげて、後は太陽の光を浴びていると、育つ力が出てきます。でも、無理に茎を伸ばそうと引っ張ればちぎれてしまいます。条件を満たして、環境を整えて、待つ。周囲は待つことが大事です」
-ほかに注意点は。
「家の中に緊張はないでしょうか? 親からの指示命令が多いとか、否定する言葉が多いとか、親がイライラしているとか…。親と子は一つのユニットなので、親が緊張していると、子どもも緊張して、おなかが痛くなったり、肩が凝ったりします。親が息をゆっくり吸って吐いて、リラックスするだけでも十分違うと思います。『あれしなさい、これしなさい』と言うのをやめて、一緒にごはんを食べたり、散歩したり、一緒に遊んだり…それがいいと思います」
-子どもたちに伝えたいことは。
「何かができているからいいんじゃなくて、息を吸って吐いて、そこにいるだけで十分だよ、と伝えたいです。そして、しんどいと感じることがあるんだったら、言葉にしてみると、ちょっと楽になるかも。心の中にためているものを、手放してみる。話すことで心が軽くなったり、つながりが感じられたりしますよ」(聞き手・中島摩子)