「生きヘタ?」ニュース
■強迫症について、精神科医で大阪人間科学大特任教授の岩井圭司さんに聞きました
2月のテーマは「強迫症」です。強い不安や恐怖、好ましくない考えにとらわれたり、それを打ち消すために手を洗うなどの行為を繰り返すことをいい、程度にもよりますが、人口の約1~2%が発症するとされています。精神科医で大阪人間科学大特任教授の岩井圭司さん(62)に詳しく聞きました。
-強迫症とは?
「平たく言うと、ばかばかしいと思いながらも、それを繰り返さずにいられないことを言います。自分の体に菌が付いているから3時間洗わないといけないと確信していたら、それは妄想です。そうではなくて、『そんなことはない』と思いつつ、でもまだ汚れている気がして、ばかばかしいと思いながら洗い続けざるをえないのが強迫症です。以前に考えられていたほど特殊な病気ではなく、最近は50~100人に1人とも言われています」
-発症のきっかけは?
「物事を確認したり、反復したりするのは生きていく上で必要なので、そういう部分はもともと脳に備わっていますが、それが過剰に作動しているイメージです。その人がもともと持っている要因に、ストレスや疲労、トラウマ(心的外傷)などが加わり、発症する。人間は誰しも強迫(無理強いすること)の要素は持っていて、軽度な場合もありますが、社会生活に影響するようになると強迫症といえます」
「例えば、鍵を閉めたかが気になり、1~2回確認するのはもともと備わっているものといえますが、自分が最後に会社を出る際、戸締まりを何度も確認している間に夜が明けた、というような場合は強迫症です。長時間の手洗いや入浴のため、遅刻するなどの場合もそれに当たります」
-周囲はどう接すればいいですか?
「本人はとても苦労していて、とてもしんどいということをまず、分かってあげてほしいです。本人はやめたいし、やっても仕方ないと分かっているけど、やめられないのです。その人に『それをしても仕方ない』『やめとき』などと言っても、追い打ちになるだけです」
「治療は投薬や認知行動療法がありますが、私の場合、患者にはまず『これまでよく頑張ってきましたね』と伝え、肩の力を抜いてもらうようにします。強迫症の人は、100かゼロか、白か黒かの思考に陥りやすいといえます。100点ではない70点の自分を否定するのではなく、そこから出発することを考えましょう、と伝えたいです」(聞き手・中島摩子)