「生きヘタ?」ニュース
■ギャンブル依存症について、都留文科大の早野慎吾教授に聞きました
6月のテーマは、パチンコやスロット、競艇などにのめり込む「ギャンブル依存症」です。ギャンブル依存症に詳しく、2020年度から継続して全国調査を実施している都留文科大(山梨県)の早野慎吾教授(59)=社会心理学=に聞きました。
-人はなぜギャンブルをするのですか?
「ギャンブルは生活に密着しています。例えば小学生の時、給食で牛乳が残っていると、じゃんけんをしたと思いますが、勝った人間が得をするじゃんけんはギャンブルです。子どもの頃から、日常的になじんでいるのです」
「人には『優劣を付けたい』『得をしたい』という気持ちがあります。また、誰もがストレスがたまると解放したくなるし、人の上に立ちたいという気持ちもある。それを短絡的に満たしてくれるのがギャンブルです」
「私は2020年度、オンラインで約4万人に調査をしましたが、直近1年間でギャンブルをしたのは約1万5千人で、依存症の疑いは約1800人でした。特にオートレース、競輪、競艇で依存症疑いの数値が高く、複数のギャンブルをする人は依存症の危険が増すことも分かりました」
-ギャンブル依存の背景にあるのは。
「都道府県別の調査結果をみると、人口の少ない地域ほど、依存症の疑いの数値が高い傾向が見られました。これには娯楽(レジャー)が大きく関係していると考えます。人口が少ない地域は娯楽が少ないため、ギャンブルに向かう傾向があるのだと思います」
「一番の問題は孤独と孤立化です。カラオケやダンス、キャンプなどの趣味を持っている人は、依存症になりにくいというデータもあります。孤独や無趣味に耐えられず、それから逃れるため、一人で遊べるギャンブルへ向かう。そうだとすれば、すべての責任を個人に押し付けても解決しません。娯楽やケアの充実が大切です。自助グループや依存症回復施設などで友人ができれば、回復につながると思います」
-周囲はどう対応すればいいですか?
「本人のキャラクターや家族との関係など、千差万別であり、一筋縄ではいきません。一番思うのは、先入観が一番危険ということです。『この人は依存症だから、こうすることがいい』と決め付けると、合わなかった時にひどいことになります」
「お金の肩代わりについては、駄目というのが基本で、特に症状が進行した場合はそうなのですが、症状が軽い人には立て替えたことで再起できた例もあります。様子を見ながら、試しながらがいい。マニュアル化はできません。判断はものすごく難しいです」
「お金のことなど大きな判断をする時は、家族もどこかとつながる方がいいと思います。依存症回復施設や自助グループなど、信頼できる2カ所以上に相談して決めましょう。私が思うのは、支える人(家族など)だけが行くのではなく、本人と一緒に相談に行くのがいいと思います。いかに本人のことを真剣に心配しているか分かりますし、信頼関係が生まれます。信頼関係こそが、孤独感をなくすのだと思います」(聞き手・中島摩子)