「生きヘタ?」ニュース
■介護の悩みについて、立命館大学の津止正敏教授に聞きました
5月のテーマは「介護の悩み」です。しんどさを誰にも言うことができず、1人で抱え込んでいる人は少なくないと思います。どうすればいいのか。一般社団法人「日本ケアラー連盟」(東京都)の代表理事で、立命館大産業社会学部教授の津止正敏さん(69)に聞きました。
-しんどさの背景は?
「一つは、家族だからやって当たり前という家族主義的な考えです。もう一つは、ジェンダー規範で、男性介護者にも女性介護者にも窮屈に作用します。男性の場合、なんで自分が…と思いつつ、自分を納得させるために理論武装をします。『これまで迷惑をかけた恩返し』とか『最後の親孝行』とか。そしてすべてを犠牲にして介護に没頭するけれど、思い通りにいかず、絶望してしまう。一方、女性は納得しないまま『女性だから』と引き受け、心身とも追い詰められる場合があります」
「利用できる介護資源が豊富になっても、家族主義的な考えやジェンダー規範はなかなか根深いです。それらの考えを『脱ぎ』、難局をくぐり抜けていくためには、伴走してくれる専門職の人や介護仲間など、周りの力が必要です。介護は1人ではできません。SOSを出しながら、感情を丸出しにしながら、周囲と一緒に難局をくぐり抜けていくのがいいと思います」
-ほかには。
「介護は、愚痴や弱音を言える相手がたくさんいることが非常に大事です。介護者の会に参加し、仲間に出会うことも救いになります。会では『1』言えば、『100』分かってくれる。つらい思いをしているのは1人じゃないと分かります。また、長い間、介護している人がリスペクトされたり、若い人が『ようやってる』と言われたり、介護者の自分が肯定されるのも大きいと思います」
-介護中の人へ。
「介護がつらくて大変なのは事実です。生活が一変し、制約がかかり、たくさんの課題に直面します。でも、そればかりでもない。ごはんを作ったら『おいしい』『ありがとう』と食べてくれた。寝る前に、にこっとほほ笑んでくれた…。ささいなことが生きる糧になる、という気づきがあります。また、介護を通じて多くの人と知り合ったり、仕事一点だった世界が広がったり。介護を真っ暗闇で終わらせるのではなく、希望に光をあてていく。それに、あなたの経験はきっと誰かの役に立つと思います」
(聞き手・中島摩子)