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■NEW■小児がん患者へのサポートについて「チャイルド・ケモ・ハウス」の田村亜紀子さんに聞きました

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小児がんや難病の子どもと家族のための施設「チャイルド・ケモ・ハウス」で活動する田村亜紀子さん=神戸市内
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小児がんや難病の子どもと家族のための施設「チャイルド・ケモ・ハウス」で活動する田村亜紀子さん=神戸市内

 小児がんは、適切な治療を受ければ約8割が治るといわれるが、長期入院で不自由な生活が続くことも多い。神戸・ポートアイランドにある施設「チャイルド・ケモ・ハウス」では小児がんや重い病気の子どもとその家族が一緒に滞在することができ、長い闘病生活をサポートする。施設を運営する公益財団法人「チャイルド・ケモ・サポート基金」理事長で、小児がんで長男を亡くした田村亜紀子さん(51)に聞いた。

 -チャイルド・ケモ・ハウスの取り組みは。

 「ハウスは19室あり、入院中の子どもが一時退院するときや、闘病を支える家族が滞在しています。患者のきょうだいや、祖父母の利用もあります。医療行為はできませんが、看護師や保育士、事務職員らが常駐して生活を支援。治療のために不自由な入院生活が必要になる病院と、自宅との間を結ぶ施設として、患者と家族が安心して過ごせる場所を目指しています。家族の相談に応じたり、闘病を経験した人たちの居場所をつくったりという活動もしています」

 -田村さんは小児がんで家族を亡くしています。

 「長男の結人は2歳で小児がんの診断を受け、入退院や再発を経て2009年、8歳で亡くなりました。入院時は狭い病室で過ごす日々の中で、医療関係者や院内学級の先生は常に寄り添ってくれたし、できるだけ自宅に帰れるように配慮もしてくれました。ただ、ただでさえ大変ながん治療に加え、ベッドの上だけで過ごす毎日はつらかった。大部屋では周囲を気遣い、音が出るおもちゃには私がテープを巻いていたんですが、結人は退院時に真っ先にテープを外して回りました。我慢させていたんだと気づき、つらくて申し訳なくなりました」

 「結人も学校が大好きな子でした。校長先生は『いつでも戻って来て』と言ってくれ、クラスの友達は手紙を送ってくれました。日常の中でつながっている感じがして、とても心強かったことを覚えています。学校と離れて孤独を感じやすいからこそ、気にかけてくれる人の存在が大きくなります」

 -体験を基に、啓発にも力を入れています。

 「神戸市の小学校で授業に参加したこともありますが、病気を正しく理解することで、当事者に対する周囲の接し方が変わると思います。例えば、抗がん剤治療の影響で髪の毛が抜けることや、『病気がうつる』と誤解して、からかう子もいます。でも、理解すれば『脱毛は治療を頑張ったからなんだ』と違う見え方になることだってあります」

 -周囲はどう接すれば。

 「友達や学校の先生など治療に挑んでいる当事者の周囲の人には、できるだけつながりを持ち続けてほしい。今は通信アプリ『LINE』やオンラインゲームなど、いろんな手段があります。直接会えなくても、具体的にできることがなくても、誰かが気にしてくれていることは本人に伝わるもの。結人と私たち家族もそう感じていました。ただでさえ重い病気という理不尽に立ち向かっている子どもや家族にとって、それはすごく救われることだと思います」

(聞き手・岩崎昂志)

 

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