山中の池に鎖に繋がれたまま遺棄された龍くん(meguさん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)
山中の池に鎖に繋がれたまま遺棄された龍くん(meguさん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

香川県にある通称「龍が池」で、鎖につながれたまま放置されていた犬が、新しい家族に迎えられた。飼い主のSetsukoさん(@myunyan_1118__)がInstagramで報告し、大きな反響を呼んでいる。

3月9日夜。池の堤防近くに、鎖でつながれたまま一晩中鳴き続けていた犬がいる--。
そんな通報を受けて動いたのは、香川県の保護犬活動家meguさん(@megu3518)だった。

■「水もなかった」車を追う目、帰りを待つように

現場に駆けつけたmeguさんは、犬の“待ち続ける目”を忘れないという。

「車が通る度に目で追っていました。元気はありましたが、水すら置かれていなくて…」

警察に引き渡せば、保健所へ行き、殺処分となる可能性があった。そのためmeguさんは、自宅で保護を開始。3カ月、飼い主を待ち続けたが、現れることはなかった。

■「この子だと思った」DMを送り続けた夫婦

動画を見たSetsukoさん夫妻は、強く惹かれたという。

「龍くんの姿に胸を打たれ、DMを送り続けました」

拾得期間が過ぎた頃、大阪の保護団体から譲渡会に出る話が流れた。譲渡経験が少ないmeguさんは迷いながらも、片道4時間以上かかる京都のSetsukoさん夫婦を「トライアル一番手」に決めた。

「同じ県内に希望者もいたのに…感謝してもしきれません」

龍くんは、今月、香川を出発。鳴門大橋、明石海峡大橋を渡り、京都の新たな家へ向かった。

■「やっと会えたね」…車から飛び降り、全身で喜びを表す

初対面の瞬間、龍くんは迷いがなかった。

「車から飛び降りて飛びついてきて…。『やっと会えたね』と涙があふれました」

meguさんは、道中こうLINEで送っていたという。

「もう龍に会えんの寂しい。でも幸せになってくれるのうれしい…」

■龍くんの“今”

現在は室内で暮らし、散歩では元気にダッシュ。甘噛みもあり、まだ不安さも残る様子だが、少しずつ家族の時間を積み重ねている。

「龍は車が大好き。これからいろんな場所にドライブに行きたいです」

■SNSでは涙と怒り…そして願い

投稿には感謝や祝福の声が寄せられた。

「龍くん、名前の通り“登る犬生”を」
「涙が止まらない。幸せになって」
「捨てた飼い主は許せない。でも今は龍くんの未来を」

Setsukoさんも、こう前を向く。

「そんな人(元の飼い主)はいなかったと思うことに。最初からうちの子でした」

■命をつないだ保護主の存在

Setsukoさんは記事で“必ず書いてほしいこと”としてこう語った。

「殺処分の可能性を恐れ、警察に託さず自宅で守ったmeguさんがいたから、龍くんに出会えました」

そして…

「里親希望者が複数いた中で、片道4時間かけて私たちに届けてくださったこと、感謝しかありません」

■捨てられる命がなくなる日まで

“犬は飼い主を選べない”。その言葉の重さを教えてくれる出来事だった。

龍くんの第二の犬生は、今まさに始まったばかり。名前のように、これから高く、強く、幸せへと登っていくことだろう。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)