障害者手帳を活用するには?※画像はイメージです(琢也 栂/stock.adobe.com/)
障害者手帳を活用するには?※画像はイメージです(琢也 栂/stock.adobe.com/)

「障害年金の制度や障害者手帳のおかげで、生活がずいぶん楽になりました。障害と向き合いながらの生活ですが、制度・手当・割引を知っているだけでも、お金の不安が減った気がします」

そう語るのは、うつ病を抱える30代の森永さん(仮名)。治療に取り組みながら、障害年金と週3日のアルバイトで生計を立てています。

障害を抱えて暮らす中で、働き方の制限や医療費の負担など、経済的な悩みは尽きません。でも実は「知っているだけ」で、生活が大きく変わる制度や手当がたくさんあります。森永さん自身が活用している「障害年金」や「障害者手帳による割引・免除制度」などを紹介しながら、制度を上手に使って安心して暮らすためのヒントをお伝えします。

■障害を抱えながら生きるためとは?

障害者手帳とは、以下の3つの手帳の総称です。

・身体障害者手帳
・療育手帳
・精神障害者保健福祉手帳

それぞれの手帳には、障害診断名や障害状態等の程度を判定した「等級」が記載されます。いずれも、障害者総合支援法にもとづき、様々な支援を受けることができます。

▽参考 厚生労働省「障害者手帳について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html

障害を抱えながら安心して暮らすために大切なのは、「制度を知り、遠慮せず活用する」ことです。医療費の助成や年金、支援サービスなどを使うことで生活の安心が生まれ、自立への一歩につながります。困ったときは一人で抱えず、自治体や専門機関に相談する姿勢も大切だと言えるでしょう。

受けられる支援や制度の中には、障害者手帳が必要なものも、そうでないものもあります。以下、障害を抱える方が利用できる制度・手当・割引の例をご紹介します。

■障害者手帳がなくても利用できるもの

▽自立支援医療制度

自立支援医療制度は、精神疾患や身体障害、育成医療などの継続的な治療が必要な方の医療費負担を軽減する制度です。通常3割負担の医療費が、原則1割負担になります。

森永さんも、この制度を利用して精神科への通院費用を抑えています。「手帳を取得する前から使えたので、本当に助かりました」と語ります。

利用するには、市区町村の障害福祉窓口で申請を行います。医師の診断書が必要ですが、継続的に通院している方であれば多くの場合で利用可能です。

▽障害年金の受給

障害年金は、病気やけがなどによって障害の状態になったとき、生活を支えるものとして支給されます。
障害年金には主に2つの種類があります。

・障害基礎年金:国民年金加入者が受けられる障害年金
・障害厚生年金:厚生年金加入者が受けられる障害年金

それぞれ、支給額や支給条件は異なります。

厚生労働省によると障害基礎年金の場合は「年間支給額(2025年(令和7)年度)は、1級が1,039,625円、2級が831,700円(いずれも新規裁定者(昭和31年4月2日以降生まれの方)の年金額)」のようです。なお、ここでいう障害基礎年金の「等級」と、障害者手帳の等級は異なるものであることに注意が必要です。

障害年金の受給を検討して、収入の柱を作ることで、お金の不安が減ることにもなります。

■障害者手帳を取得すると利用できるもの

▽割引や免除で支出を減らす

障害者手帳を持つことで、多くの「割引」や「免除」が受けられます。
 代表的な例をいくつか挙げます。

・交通機関の割引
公共交通(電車・バス・飛行機など)で半額や数割引になる場合があります。

・NHK受信料の免除
世帯によっては全額免除となります。

・携帯電話・通信の割引
会社によって割引内容は異なるものの、主要キャリアには障害者向けのプランが用意されています。

・税金・公共料金の減免
自動車税や住民税、上下水道料金などの減額制度がある自治体もあります。

これらを一つずつ確認し、使えるものを申請するだけでも年間数万円の節約になります。森永さんは特に「交通費」と「通信費」で恩恵を感じています。通院や外出が多い人ほど、効果は大きいです。

■自治体・福祉窓口の活用

制度を使うには「情報を取りに行くこと」が最も重要です。

障害福祉課や障害者就業・生活支援センター、生活困窮者支援センターでは、最新の制度や手続きのサポートを受けられます。

森永さんも、最初はどこから聞けばいいかわからず不安でしたが、地元の自治体に相談したところ「こんな支援ありますよ」と教えてもらえることが多く、思い切って訪れてよかったと感じているようです。

中には自治体独自の手当(交通費補助、給付金など)もあるため、公式サイトだけでなく、実際に窓口へ行くことがポイントです。

■無理せず頼る力を身につけよう

支援制度は「本当に困っている人が使うもの」ではなく、「安心して暮らすための権利」でもあります。家族や友人、支援員と一緒に手続きを進めるのも良いでしょう。

森永さん自身も、頼ることを覚えてから生活に不安を抱えることが減ったと言います。

「一人で頑張らなくていい」と気づけたのが、何より大きな収穫です。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)