将棋の「伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦」(神戸新聞社主催)7番勝負の第2局で、立会人を務めているのは、攻めの鋭さから「妖刀」と称された福崎文吾九段(65)だ。初日の封じ手について、これまで立会人となった数々の対局の中でも「今日ほど予想手の浮かばない将棋はない」と評し、2日目の見どころも語った。
今期の王位戦7番勝負は、藤井聡太王位(22)=竜王、名人、王座、棋聖、棋王、王将=に、永瀬拓矢九段(32)が挑戦している。
第1局では千日手が成立。両者の対局でみると、5月の名人戦7番勝負第4、5局から3局連続での千日手となった。
福崎九段は、千日手が相次ぐ状況について「戦国時代でも、両者が強いと(相手に)仕掛けさせようとする。にらみあったままというのが多い。動いたら負けるとかね。将棋もそうですね」と指摘。藤井王位と永瀬九段の勝負を、戦国武将の上杉謙信と武田信玄になぞえながら解説した。
1日目の対局では、永瀬九段が2時間24分の大長考の末、手を封じた。福崎九段は「この大長考がやっぱり一番印象に残ってますね。候補手が浮かばないぐらい難しい封じ手でした」と語った。
その上で、本局は「早いところから、深い海になったような感じで、もうどこが東か西か分からないような…。難解な展開になってますね」と初日を振り返った。
「両者はいつも終盤でもつれ合って、ごろごろ転がりながら勝負がついている。本当に紙一重」と福崎九段。2日目の両棋士の方針については「多くのプロ棋士にも分からない。だからこそ、面白い」と話した。
2日目に封じ手が開封された後については「藤井さんの予想が外れるのか、外れないのか。藤井さんは長考すると思うね。午前中は、じっくりこってりで、全然動かない気がする」と予測した。
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福崎九段は「十段」「王座」のタイトルを計2期獲得し、今年4月の引退まで現役最年長棋士として活躍した。インタビューを収録した動画では「棋士生活は充実してましたね。幸せ者です」と回顧。「棋士は本音でしゃべってくる。棋士生活は嘘のない世界っていうのかな。それが正直で一番よかった」と語った。(小林伸哉)
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