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「墓じまい」を計画している共同墓地。昭和40年代ごろまで地元住民が土葬していたという=播磨町上野添1
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「墓じまい」を計画している共同墓地。昭和40年代ごろまで地元住民が土葬していたという=播磨町上野添1
何も刻まれていない石柱。墓石の可能性があり、縁故者を探すプレートが立つ=播磨町上野添1
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何も刻まれていない石柱。墓石の可能性があり、縁故者を探すプレートが立つ=播磨町上野添1
子どもを埋葬しているとみられる地蔵尊も、縁故者が分かっていない=播磨町上野添1
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子どもを埋葬しているとみられる地蔵尊も、縁故者が分かっていない=播磨町上野添1
墓地の入り口には縁故者に申し出を呼び掛ける立て札がある=播磨町上野添1
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墓地の入り口には縁故者に申し出を呼び掛ける立て札がある=播磨町上野添1
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 共同墓地を丸ごと「墓じまい」しようとしている地域が、兵庫県播磨町にあるらしい。少子化などの影響で、お墓を整理する動きが広がっているというのは知っていたが、全部まとめて取り組むというのはあまり聞いたことがない。何があったのだろう。

    ◇

 JR土山駅から車で3分ほど。住宅の間を縫うように、細長い里道が延びる。車を降り、約50メートル進むと、その共同墓地はあった。

 きちんと区画されておらず、そこかしこに墓石が立っている。周囲に生い茂る竹やぶの向こうには、立ち並ぶマンションが見えた。

 兵庫県播磨町上野添の住宅街のど真ん中。亡くなった人をまつる静かな空気が流れ、まるで異空間に入ったような感覚になる。

 「少なくとも数百年前の江戸時代から続いていることが確認されています」。案内してくれた同町総務グループリーダー藤田悦孝(よしたか)さん(47)が教えてくれた。

 藤田さんらによると、墓地は地元の野添村財産区の所有で、広さは約1200平方メートル。火葬が普及する昭和40年代ごろまで、地域では亡くなった人を土葬する風習があり、ひつぎごと埋めていたという。

 何も刻まれていない高さ約50センチの石柱があった。墓石に見えなくもない。その前に金属製のプレートが立ち、縁故者に連絡を呼び掛ける文章が書かれていた。

 よく見ると、あちこちに同じ内容を記したプレートが立っている。花筒だけしかない場所にも、いびつな形の“岩”の前にも…。

 「もしかすると故人が眠っているかもしれない場所には、使用者がいるかもしれないので立ててあります」。藤田さんは言った。

 ほとんどの墓石には、判明した使用者名を書いたプレートを立てているが、改葬を前に、縁故者が分からないお墓の関係者を捜しているという。

■近隣から苦情

 どうして墓じまいすることになったのか。藤田さんら同町総務グループに聞いた事情はこうだ。

 共同墓園はかつて、財産区の有志が草刈りなどを担っていた。管理している人たちを記載した2010年作成の名簿が存在する。しかしその後、住民の高齢化や代替わりなどでほとんど管理されなくなった。

 雑草が茂り、蚊が大量に繁殖した。伸びた竹が、隣接するマンションの立体駐車場に絡まることもあった。同町に住民から苦情が入るようになった。

 本来は財産区が対処すべき問題だったが、町は“最低限の対応”として、職員が年1、2回程度、竹の伐採や草刈りをしてきた。

 しかし町有地でもない場所の管理のために、職員が毎年、労力と時間をかけ続けるわけにもいかない。そこで名簿を基に縁故者に連絡し、墓じまいを促すことになったのだという。

■立て札を設置

 19年1月、第1回使用者会を開き、地元の集会所に44人が集まった。周辺住民から苦情が入っている現状を町職員が説明し、「皆さんで墓じまいしませんか」と提案した。

 同5月にはアンケートを取り、大半が改葬に同意。一部反対した使用者もいたが、話し合いを重ねる中で納得してくれたという。同10月から現況調査に入り、約80世帯の墓が299基あることが判明。うち260基の縁故者が分かった。39基は「無縁墳墓」と位置付けられた。

 無縁墳墓を改葬する場合は、法律によって1年間、立て札を掲示して、墓に対する権利があることを申し出るように呼び掛けなければならない。

 財産区の関係者は墓地管理組合を結成。20年9月、墓地の入り口に立て札を設置し、無縁墳墓の前にプレートを立てた。

■閉眼供養

 「お葬式があったとき、土葬の穴を掘る人を『穴掘り当番』と言ってました。私もスコップとつるはしで掘ったことがあります」。管理組合会長に就いた佐伯英治さん(72)は回想する。

 今年10月31日に閉眼供養を予定しており、その後、改葬する。遺骨は掘り起こし、加古郡衛生事務組合が契約する供養先に届ける。

 私が墓地を訪れた3月下旬、ほとんどのお墓には花が手向けられていた。

 「皆さん、ご先祖を敬う気持ちは変わりなく持っています。ただ、共用部分の管理は難しい。荒れてしまっては周囲に迷惑を掛けてしまい、供養もできなくなってしまいます」。佐伯さんは言った。

 時代とともに習俗は変化しても、先祖を大切にする思いは、いつの時代も変わらない。だからこそ、墓じまいをしなければならないときもある。そう感じさせられた。

 縁故者らの申し出は、同町総務グループTEL079・435・0357

(斉藤正志)

     ■     ■

 地元ならではの慣習、かつての珍騒動のその後、変わった地名…。言われてみると気になって仕方ない。そんな「なぜ?」「何?」を、記者が深掘りします。最初は五つのテーマを取り上げ、その後は随時掲載。調べてほしいことも募集します。郵送かファクス、メールで連絡先を記し、〒675-0031 加古川市加古川町北在家2311、神戸新聞東播支社編集部「ナゼナニはりま」係(ファクス079・421・1023)まで。toban@kobe-np.co.jp

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