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男が取り押さえられた現場付近=高砂市内
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男が取り押さえられた現場付近=高砂市内

 近年、刑法犯の検挙者数は減少傾向にある。だが、このうち再犯者の割合は増え続け、2020年は全国で5割近くを占めた。行政も民間も出所者の職と住居の確保などを進めるが、それでも再び犯罪に手を染める例が後を絶たない。盗みを繰り返して生きてきた男の公判を通じ、更生の難しさを考えさせられた。(千葉翔大)

 「被告人を懲役4年に処する」。2月18日、神戸地裁姫路支部で裁判官が告げた。住所不定、無職の男(77)は、常習的に夜間、他人の家に侵入し盗みを働いたとして、常習特殊窃盗罪に問われた。公判では「立ち直る機会があればもう一回、自分の人生を考え直したい」と話していた。

 判決などによると、昨年12月2日午前3時ごろ、兵庫県高砂市内の民家で住人男性(39)の財布から現金6667円を盗んだ。金額の目標を10万円に設定していた男は、その後も室内を物色。物音で気付いた男性に、自宅近くの路上で取り押さえられた。初公判で罪状認否を問われた男は「間違いありません」と認めた。

    ◇

 検察官の冒頭陳述などによると、男は高校を卒業後、勤めていた会社を半年で退職。以来、定職に就かず、空き巣を繰り返してきたという。同様の盗みを働き、昨年10月までの約5年間、関東地方の刑務所で刑に服した。

 出所後は刑務作業で得た報奨金28万円を手に、東京都内の更生保護施設や知人宅を転々とした。同11月に神戸市内に移り、生活保護を申請。審査を待つ間、NPO法人の支援を受け、同市内の旅館に宿泊した。食事や洗濯などの生活費として1日1500円分のクオカードを受け取り、必要最低限の生活環境は整っていた。だが、再び犯罪に駆り立てられた動機を公判で問われ、「おいしい物を食べたり、ギャンブルをやったりしたい」と口にした。所持金は競艇などに費やし、6千円ほどに減っていた。

 前回の罪を犯した時は生活保護費の受給前日で、今回も申請の手続きは済んでいた。なぜ、待てなかったのか。NPO法人の男性理事は悔やむ。「福祉の支援のプロセスを(男に)十分に理解してもらえなかった。こちらの配慮が足りなかったのか」

    ◇

 公判で検察官は問いただした。「今回、あなたは家の中の電気がついていたのに侵入した。住人と鉢合わせる可能性を考えなかったのか」。男が狙った民家からは明かりが屋外に漏れていたが、「これまで鉢合わせることは多々あった。そこで何事もなかったように逃げるのが、この仕事の流儀です」と答えた。

 男と向き合った裁判官は、判決の言い渡しをこう結んだ。「『泥棒業』は定年したと思ってください。次に出所した時、泥棒業は卒業です。残りの人生を少しでも安らかなものにしてください」

■検挙者の半数が再犯 国は職や住居支援

 法務省が昨年12月に公表した2021年版の犯罪白書によると、刑法犯検挙者数は04年をピークに減少傾向にあり、20年は18万2582人。戦後最少を記録した。だが、同年の再犯者数は8万9667人で、検挙者数の49・1%を占める。初犯者数、再犯者数ともに前年より減ったものの、初犯者数の減り幅が大きく、再犯者率が押し上げられた格好だ。

 国は16年に再犯防止推進法を施行し、出所者の職と住居の確保を進める。同省の再犯防止推進白書によると、出所者を雇うことで更生に協力する事業者「協力雇用主」も年々増加。雇用されている出所者の人数は19年、2231人に上っていた。

 だが、新型コロナウイルス禍によるとみられる状況が生じている。協力雇用主のうち、実際に出所者を雇っている企業は20年、前年比で165社減の1391社。雇用される出所者数も272人減ったという。(千葉翔大)

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