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「御影屋」代表の柿木貴智さん=高砂市高砂町今津町
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「御影屋」代表の柿木貴智さん=高砂市高砂町今津町
ぼっくりんの誕生発表会。子どもたちに大人気となった=2009年3月、高砂市高砂町朝日町
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ぼっくりんの誕生発表会。子どもたちに大人気となった=2009年3月、高砂市高砂町朝日町
松右衛門帆を使った色とりどりのバッグ=高砂市高砂町今津町
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松右衛門帆を使った色とりどりのバッグ=高砂市高砂町今津町

 江戸時代の発明家で高砂出身の工楽松右衛門(くらくまつえもん)による帆布「松右衛門帆」を再現し、商品を製造販売する「御影屋」(兵庫県高砂市高砂町今津町)が4月で開業6周年を迎えた。代表の柿木貴智(よしのり)さん(50)=同市=は、兵庫を代表するご当地キャラクター「ぼっくりん」の生みの親でもあり、10年以上にわたり高砂ブランドを追求してきた。コロナ禍の苦境だが「高砂盛り上げましょうや」と前を向く。(増井哲夫)

 契機は、2009年の高砂青年会議所(JC)理事長就任。「高砂を全国に売り込もうぜ」とメンバーらと話し合い、誕生したのがぼっくりんだった。「子どもに人気が出れば親世代を呼び込める」との狙いは的中。イベントに引っ張りだこになった。

 「おもろいことを考え、とにかく話題を作ろう」。知名度を上げようと各地へ出向いた。実現こそしなかったが、着ぐるみに元高校野球のエースが入り、野球の独立リーグ始球式で奈良のマスコットキャラ「せんとくん」と対決させる企画をもくろんだことも。

 市から地域ブランディングへの協力を求められ、高砂ブランド協会(11年にNPO法人化)を発足させた。そんな時に知ったのが、工楽松右衛門だった。松右衛門帆は現存する日本最古の帆布とされる。「その丈夫さが尋常ではない。海運業の発展に貢献した人が郷土にいたことに感動した」という。

 神戸芸術工科大教授の野口正孝さんと共に松右衛門帆の再現に乗り出し、自身も工楽や帆布について調べた。同県西脇市などの播州織職人の協力もあり再現は成功。バッグなどを商品化して話題となり、人気を博した。

 ただ、ここから次々と難題にぶち当たる。播州織工場は薄手生地を扱っていたため、織機を極厚の松右衛門帆に対応させなければならない。数社が交代で対応してくれたが、15年ごろには限界を迎えていた。

 「高砂で織ろう」。そう考えたが、今度は補助金が打ち切りに。「続けるには会社を起こすしかない」と、16年4月に株式会社「御影屋」を設立した。助成金を得て織機2台を購入し、事務所1階に工場を開いた。職人に教えを請い、織機の基本も学んだ。17年には生産も軌道に乗って取引先も増え、百貨店の販路も開けた。

 ところがそこにコロナ禍が襲う。客足が遠のき、取引先も激減した。工楽ゆかりの鞆(とも)の浦(広島県福山市)に設けた支店は一時、売り上げゼロという日も。

 それでも次の一手を考える。パーツなどの外注をやめ、生産を高砂で完結しようと、ネットオークションで中古の業務用ミシンを何台も購入。修理しながら使い方を習得し、いつかは「純高砂産」を目指す。

 「苦しいが、ここであきらめたら職人や先生、市の関係者をはじめ協力してくれた人たちに顔向けできない」。コロナの荒波の中、覚悟を持って御影屋7年目のかじを取る。

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