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「お仕事体験隊」の活動を振り返るサポーターや保護者ら=陵南公民館
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「お仕事体験隊」の活動を振り返るサポーターや保護者ら=陵南公民館
お仕事体験隊でパソコン入力など事務作業をこなす智矢さん=2018年3月、東播磨生活創造センター「かこむ」
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お仕事体験隊でパソコン入力など事務作業をこなす智矢さん=2018年3月、東播磨生活創造センター「かこむ」

 知的障害や発達障害の中高生らが週1回、東播地域の企業や店、施設などで働く「お仕事体験隊」が活動10年を迎えた。特別支援学級に長男が通っていた升木美智子さん(63)=兵庫県加古川市=が2012年、保護者や地元公民館関係者らとともに始めた取り組み。地域のサポーターや事業所などの協力で続けてきたが、スタッフの高齢化などで継続が困難に。現在参加する高3生2人の卒業を機に、活動を休止する。(増井哲夫)

 升木さんがこうした取り組みがあると知ったのは09年7月、陵南公民館(同市野口町水足)の自閉症療育講座だった。岡山県倉敷市から全国に広まった「ぷれジョブ」という活動について、発案者の話を聞いた。

 子どもたちが週1回働き、さまざまな経験を通じて社会性を学び、仕事への関心を高めてもらう試みに、「トライやるウイークよりも充実した経験ができると思った。兵庫でもできないかとは考えたが、準備の大変さを考えると尻込みしてしまった」。

■「トライやるは次いつ?」息子の一言がきっかけ 

 それでも動き始めたきっかけは12年、トライやるから帰ってきた中2の長男のつぶやきだった。「お母さん、今度はいつやるの?」。自分たちで立ち上げるしかないとは思ったものの、何から手をつけたらいいのか分からない。そんな時、療育講座を企画した、当時公民館職員の西川正人さん(72)が「やるなら今やで」と背中を押した。12年10月、賛同してくれた保護者5人とともに体験隊を設立。13年4月に活動をスタートした。

 子どもたちは週1回1時間、協力事業所で働く。仕事は、子どもに付き添うサポーターが保護者や事業所と事前に打ち合わせ、その子の特性に応じた内容を考える。期間は1事業所ごとに原則半年。就労体験なので報酬はない。各事業所から評価表を付けてもらい、今後の仕事に向けた助言をもらう。希望すれば、また別の事業所で働くことができる。

 事業者、地域住民、保護者や学校向けにそれぞれ案内のチラシを作成し、配布。特に事業所には、公務員だった西川さんが出向き、協力を求めた。当時県内ではトライやるが定着していたため、活動について「簡単に言えば継続的なトライやる。週1時間の就労を6カ月かけて体験するので、働くことがどういうことなのかを時間をかけて理解できる」とアピールした。

 当初受け入れ先となったのは、図書館や公民館、スーパー、ホームセンター、喫茶店、パン店の6カ所。中2~高2の男女6人がさまざまな仕事を体験し、地域住民ら15人がサポーターとして支援した。

 「棚にどれくらい並べられるかを考え、スピードときれいさを心がけた」(品出し担当の高2男子)、「失敗したら頭の中が真っ白になるけれど、サポーターさんが助けてくれるので安心できる」(喫茶店で働いた高1女子)など、当時の振り返りからは体験の意義がうかがえる。

 活動は軌道に乗り、メンバーが入れ替わり毎年5~7人が参加。受け入れ先は計13カ所にまで膨らんだ。

■我が子以外もサポート「親も成長」

 一般雇用の就職につながったケースもある。中2から5年間、7事業所で就労体験をした智矢さん(23)=加古川市=だ。

 「どうしても高卒の資格を取りたい」と一念発起。県立農業高校を見学して気に入り、体験隊への参加を続けながら受験を乗り切り、同校定時制に合格した。高校時代は体験隊、アルバイトも両立し、卒業後の18年4月、製造請負会社に就職した。智矢さんは「体験隊で得た自信が、精神的な支えになっている」。サポーターの活動を続ける母美和さん(51)は「他の子のサポートをする中で、親も成長できた」と話す。

 10年間で参加した中高生は計16人。36人のサポーターが彼らの活動を支えた。ただ、サポーターが高齢で活動を次々と退き、今では保護者がサポーターの主役になり、継続が困難になった。

 「サポーターとして関わる地域住民や事業所にとっても有意義な活動。行政の支援を得て、現役世代にバトンタッチできればいいのだが、現状はいったん休止するしかない」と升木さん。来春、体験隊の幕を下ろすつもりだ。

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