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入選作品「AIのゆくえ」と遠藤由美子さん=加古川市
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入選作品「AIのゆくえ」と遠藤由美子さん=加古川市

 兵庫県加古川市の陶芸家、遠藤由美子さんの作品が昨秋、国立新美術館(東京)で開かれた美術展「第75回記念二紀展」の彫刻の部で入選した。これまで、手がける文化イベントの準備などに追われて制作時間が取れなかったが、今回は憧れの同館に飾られるため一念発起し、約40年ぶりに出展。自身2度目の入選を果たし、「絶対にこの場所に出したかった。審査員の評価までいただけて、うれしい」と喜ぶ。

 遠藤さんは18歳のころ、京都の芸術短大で本格的に陶芸を始め、卒業後は加古川の自宅で陶芸教室「土器土喜(どきどき)」を開いている。人間の思いや心情を、独創的な形にして表現する作風で知られる。

 二紀展には短大卒業後、約40年前に出展し初入選。その後も播磨美術賞展で、ヨーロッパ奨励賞などを受けた。現在、東播地域の住民らがギャラリーなどで作品を展示する文化イベント「まちかどミュージアム」の主催団体代表も務める。

 大作を再び二紀展に出したいとずっと思っていたが、多忙な日々を送る中、いつしか入選の過去は遠くなっていった。今回再び挑戦しようと思ったきっかけは、5年前、今の会場が国立新美術館だと知ったことだったという。以前に会場を訪れ、凝ったデザインの内外装に心を引かれた。入選すれば、そこに自分の作品が飾られる。「今年こそは」と思った。

 毎年、1文字で表す自身の目標。2022年は「挑」に決めた。年齢を重ねる中で、時間や労力を考えた時、挑戦するなら今しかないと感じ、覚悟を決めた。同年の年頭から作品の構想を練り、9月に作業を開始。素材を土から形成し、自宅の窯で陶器の作品を焼いた。約1カ月かけ、完成したのは出展締め切りの3日前だった。

 作品は、「AI(あい)のゆくえ」と名付けた。高さ168センチ。鉄で作られた1辺42センチの立方体四つを積み重ね、その中に陶器で制作したしずく形の作品を配置している。

 「人工知能(AI)が発達していく中で、人の心の中にある愛がどう受け取られていくか」をテーマにした。人間をイメージしたという陶器は一つずつ形が微妙に異なり、「全ての人が異なる多様な愛」を表す。また、断面の部分はハート形に見えるよう工夫した。

 入選し、同館の広いスペースに飾られた作品を、多くの人が鑑賞してくれたことに感激したという。審査員からも「この発想は私の中にはなかった。次回も楽しみにしている」と声をかけられた。遠藤さんは「もう少し、作品に時間をかけたかった。今後も体力の続く限り、挑戦していきたい」と抱負を語った。

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