元神戸市職員で、環境カウンセラーの西谷寛さん(68)=明石市=が神戸大で講演した。学生ら約30人に向け、10年以上続く生き物観察会などの取り組みを紹介しながら「体験すること」の効果を訴えた。
要旨は次の通り。
神戸市役所を退職後、ボランティア団体「海と空の約束プロジェクト」を中心に活動し、環境問題や防災の重要性を伝えている。
活動は多岐にわたる。川や海、街を巡って清掃活動や防災教育に取り組む。神戸の住吉川や明石の海岸の清掃活動を通じて、ごみを捨てない生活習慣の大切さも訴えてきた。
クリーン作戦で清掃するだけでは問題は解決しない。漁師らと2時間かけて清掃した明石の海岸が、数日後の大雨で再びごみであふれたことがあった。問題の根本を考えることも必要になる。
防災士としての活動にも力を注ぐ。1995年1月17日の阪神・淡路大震災の経験を基に、災害が起きたときに家族で集まる場所の確認や、スマートフォン以外での連絡先の共有など備えの重要性を伝えている。阪神・淡路の被災地でも被害の程度によって防災意識に差があると感じる。その差を埋めるため、学校や地域の住民に自らの体験を伝え、災害時に何が必要かをともに考える場を設けている。
重視するのは実体験だ。川や海での活動では生態系や環境問題を体感的に学べるように工夫する。子どもも大人も生き物を探しながら、地域の豊かさに気づくことを目指す。こうした経験が単なる知識の共有にとどまらず、記憶に深く刻まれる。話を聞くだけではなく、自ら行動し、考える体験につなげる。そんな思いでこれからも活動を続けたい。(まとめ=神戸大経済学部、林 仁大)
【にしたに・ひろし】1979年、広島大水畜産学部卒。神戸市や出向先の環境省で環境行政に携わり、2009年には生物多様性や水の循環などについて訴える絵本「海と空の約束」を自費出版。15カ国語に翻訳されている。
西谷さんの「海と空の約束プロジェクト」はこちら
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兵庫県ゆかりの講師による神戸大学「神戸地域講座」の一環で、聴講した学生が手がけた記事を掲載しています。