「『ありがとう』を、つぎの一歩へ。」が合言葉となった１５日の第５回神戸マラソン。いま、感謝の気持ちを伝えたい人は？　走り終えたランナーや式典に参加した高校生に聞いた。（長嶺麻子、中川　恵）

　【神戸市の広瀬さやかさん】

　びっしり文字が書き込まれた白いたすきを胸に、初の神戸マラソンを走りきった神戸市立東落合小学校教諭の広瀬さやかさん（２６）＝同市西区。「担任を受け持つ６年生がサプライズでくれたんです。沿道にも来てくれて。多くの声援でゴールできて、本当に幸せ」。中学、高校、大学と陸上部。神戸マラソンは過去３回落選し、ようやく出場できた。「目標に向かって頑張る私の姿を見た子どもたちに、何か伝わっていたらいいな」

　【宝塚市の小林進さん】

　結婚式をしたホテルオークラ神戸、今年１月に亡くなった母の金婚式を祝った神戸ポートピアホテル…。宝塚市の会社員、小林進さん（４７）は思い出をかみしめながら走った。阪神・淡路大震災で神戸市中央区の実家は半壊。結婚延期も考えたが、母の後押しでその年の夏に式を挙げた。神戸マラソンは初出場。神戸大橋を渡るころから涙が止まらなくなった。「ゴールで母が待っている気がして…。いい年して何ですが、生んでくれてありがとう」

　【仙台市の伏見司さん】

　「ありがとう神戸」と赤字で書いたＴシャツを着て、初めて神戸の街を走った仙台市の会社員、伏見司さん（３０）は「同じ震災を経験した街が、どう変化していったのか確かめながら走った」と話す。東日本大震災の後、関西弁で話すボランティアの姿に心強さを感じ、今回はお礼を伝えに来た。「沿道から『応援してるで』とたくさん声をかけられ、心の深い部分での絆を感じた。東北の課題は多いけど、風化させないよう頑張りたい」

　【宮城・塩釜高の須藤朋ノ香さん】

　スタート地点で、ランナーに笑顔で手を振り続けた宮城県塩釜高校合唱部の須藤朋ノ香（ほのか）さん（１７）。「応援する気持ちで来たけど、ランナーからたくさんの笑顔をもらって逆に元気になった」。式典で合唱するために招待され、部員４人と共に初めて神戸に。「つらいことがあっても、２０年の月日と前向きな姿勢で神戸は復興したのだと知り、あらためて宮城の復興を考えることができた。被災地を気にかけてくれた人たちに感謝です」