今、ベンチャー企業が熱い。上場が相次ぎ、2017年のベンチャー調達額は5年前の4倍を超える。第4次ブームを迎えたとされる中、神戸市では3年前から起業家支援に取り組み、成果が出始めている。経営者として数々の企業で腕をふるい、神戸の支援事業で中心的な役割を担ってきた関西学院大学大学院経営戦略研究科の西本凌教授(56)に話を聞いた。兵庫での起業の未来像をどう描きますか? (篠原佳也)
-ベンチャー企業とはどんな会社ですか。
「ベンチャービジネスは和製英語で、アメリカではスモールビジネスと呼ぶのが一般的です。新規性・革新性があり、短期間で成長する可能性を秘めた企業を指す。だが、何より大切なのは、高い志を持ったアントレプレナー(起業家)に率いられているということです」
「早稲田大学の松田修一名誉教授の言葉を借りるならば、『高い緊張感に長期に耐えながら、主体性、夢を持ち、目標を掲げ挑戦する創業者こそがアントレプレナー』です」
-神戸市は約3年前から、関西学院大学、神戸新聞社と「神戸スタートアップオフィス(SU)事業」を始め、起業家支援に乗り出しました。西本先生はプログラム統括者を務めています。
「起業には東京が有利です。人が多く、起業家のコミュニティーのクラスター(集積地)でもある。顔を合わせることで関係性が深まり、ビジネスの機会が生まれる。だが、地方でも危機感とやる気、少しの知恵、そしてインターネットの活用で活路は開ける」
「神戸では約3年間で29社のビジネスを磨いてきた。思ったより成長の可能性を秘めた『玉(ぎょく)』の企業が多かった、という印象があります。株式公開を目指せる企業もあった。経営指導し、自分のネットワークを紹介することで、成長の一助となったのであればうれしい」
-神戸の起業家支援では新たに、IT系スタートアップと市職員が地域課題を解決する「アーバンイノベーション神戸(UIK)」事業がスタートしました。
「例えば、区役所窓口でのスムーズな案内システムの構築や、子育てイベントへのアプリを使った参加者誘導など、市役所の業務に絡めた実証実験を始めます。実験で成果が上がれば、モデルケースとして市役所全体に展開でき、同じような課題を抱えるほかの自治体にも導入可能です。意義深い取り組みだと思う」
-起業のまちとして神戸市、あるいは兵庫県の可能性はどうでしょうか。
「今回のSU事業で起業のコミュニティーの礎ができたと感じる。神戸に限らず、地元の自治体やメディアによる支援は大きな後押しになるはず。新聞社はグループのテレビやラジオ、雑誌などを活用することが可能です。報道や広告の分野で起業家の事業を広め、その相乗効果でビジネスを成長させることができる」
「神戸では拠点の一つとして、会員制のレンタルオフィス『120 WORKPLACE KOBE』の運営が始まった。シェアオフィスといえばどこも似たようなサービスだが、入居・利用者同士でコミュニティーをつくり、自治体や地元メディアが持つ企業や金融機関、大学、自治体などの連携先とつなぐネットワーキングは大きな魅力です。入居者に対する指導体制の充実も大事になる」
-連携による効果は表れているのでしょうか。
「SU事業に参画した神戸市のIT企業『Momo(モモ)』が、車の運転中にスマホ操作を不能にするカバーを開発し、交通事故を減らすことで損害保険料を引き下げたい損保会社とコラボレーションしました。想定外の効果と言えます」
「神戸のレンタルオフィスは地域貢献のため、投資というリスクを伴って開設された。起業支援では、ビジネスに精通した人材育成もそうだが、支える側がどんな展望を描いているのかが問われる。覚悟を持って取り組んでほしい」
▽にしもと・りょう
1961年京都府生まれ。米マサチューセッツ工科大でMBA取得。京セラで経営指導に携わり、リップルウッド(再生ファンド)参画。ナカノス(現ミツカン)社長、デジタルガレージ最高執行責任者(COO)などを歴任。
〈記者のひとこと〉
論理的で即断即決。大手企業から社長のオファーもあったが、今は大学教授の職に力を注ぐ。授業では優しいまなざしで学生と接する。「多くの学生に頼られる生活もアリかな」と後進の育成に努める日々だ。
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