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再開を待ちわびるサロン会場の部屋。机がないと広く感じる=中津公会堂
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再開を待ちわびるサロン会場の部屋。机がないと広く感じる=中津公会堂
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 衆院選の19日公示、31日投開票が決まった。新型コロナウイルスは地域住民を疲弊させ、飲食店をはじめ、事業者を苦境に陥らせている。この国の行方を決める選挙を前に、兵庫県の東播地域からコロナ禍の実情を伝える。

     ◆

 住宅街の一角にある中津公会堂(加古川市加古川町中津)。レクリエーションや健康講座の後、コーヒーとおしゃべりを楽しむ高齢者の姿が見られなくなってから、1年半がたった。

 「出てこようと思うから化粧もおしゃれもするし、元気になれる。家ばっかりだと気持ちが沈んじゃう」

 「なかつ『和っはっは』サロン」の代表●井サチ子さん(80)が、表情を曇らせる。地元の70歳以上約50人が毎月第1木曜の午前中に集うサロンは、最初の新型コロナウイルス緊急事態宣言以降、再開を見合わせている。人数を絞ることも考えたが、分け方で悩む。何より感染の不安が拭えない。

 加古川市内6カ所の地域包括支援センターによると、サロン活動を行う約190団体中、半数以上の約110団体がまだ再開できていない。高砂市では67団体のうち3団体が休止し、8団体が自粛を継続。稲美町でも昼食を伴う23自治会の「いきいき広場」は一回も開けず、播磨町では2020年度、33団体中14団体の開催回数が予定の半分を下回った。

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 介護の通所サービス事業所も対応に苦慮する。利用者が陽性になれば、感染の広がりがないかを確かめるため、休止せざるを得なくなる。自宅待機となった利用者には代わりに受けられるサービスが必要だが、「なかなか見つかりにくい」。9月上旬に利用者1人が陽性となり、デイサービスを1週間休んだ高齢者福祉施設「常寿園」(高砂市北浜町牛谷)の施設長、長谷川均さん(47)が明かす。

 休止明け、見過ごせない変化があった。毎日のように通っていた70代の女性。歩くことはできるものの、顔は下を向き、表情が消えた。認知症が悪化していた。職員らが声掛けを意識的に増やし、1カ月たって表情に明るさが戻ったが、長谷川さんは「1週間でも影響は大きい。生活の中で動くことの大事さを改めて感じた」。

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 施設に代わる選択肢は在宅サービスになる。ヘルパーらは濃厚接触者でも、必要なら防護服で可能なサービスを続ける。「ヘルパーステーションたけのこ」(加古川市東神吉町砂部)の管理者辰巳良子さん(67)は「日々危機感は強いが、訪問介護は最後のとりで。断るわけにはいかない」。使命感で支えられている高齢者福祉の現状が浮かぶ。

 ただ、慢性的な人手不足に緊張を強いられる。ヘルパーの感染が分かれば、利用者の元に行ける人材を急きょ探さないといけない。「何とか乗り越えられているが、いつでも対応できるかと言われると難しい」

 ワクチン接種が進み、感染者も減っているが、高齢者にとってまだリスクは高い。心身の健康を保つため、人との触れ合いや必要な介護サービスを確保できる体制が求められている。(若林幹夫)

(注)●は吉の異体字、「吉」の「士」が「土」

【バックナンバー】
(3)<ワクチン接種>前例ない試み、自治体混乱
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