祈り継ぐ震災21年
阪神・淡路大震災から21年となる17日、被災地にさまざまな慰霊の“音”が響く。震災直後、臨時航路で被災者を運んだ船員は、当時人であふれた岸壁を前に汽笛を鳴らす。釣り鐘が砕け散った寺は、破片で鋳造し直した鐘を突く。鎮魂の祈りとそれぞれの思いを込めた音が、21回目の「1・17」を迎える街にこだまする。
「復興へ向かう神戸と共に、21年間を過ごした船です」。神戸沖を巡るレストラン船「コンチェルト」の船長、青木秋茂さん(45)=大阪府阪南市=は純白の船体を見やった。
震災当時は前身のレストラン船「シルフィード」の航海士。神戸港に停泊中の船内で激しい揺れに襲われた。阪神間の交通網は断たれ、3日後から神戸-大阪間の海上輸送を担った。
揺れで波打った神戸ハーバーランドの高浜岸壁、大きなリュックサックを背負い乗船を待つ親子。船内では利用客が床に敷いたブルーシートに座り、トイレには行列ができた。「皆どこへ向かい、誰に会うのだろう」。非日常の光景が広がる中、片道約2時間の航行を繰り返した。
臨時航路の運航は約2カ月続いた。その後、船はレストラン業を再開したが、休止やコンチェルトへの船名変更などもあり、震災当時を知る船員は2人だけとなった。今は毎日4回、客を乗せて神戸沖を周遊する。
神戸港では毎年1月17日正午、観光船やフェリーの汽笛で犠牲者を悼む。今年はレストラン船「ルミナス神戸2」や遊覧船「ロイヤルプリンセス」など少なくとも6隻がそれぞれ響かせる。青木さんが追悼の音を鳴らすのは初めて。ランチクルーズの出港前に30秒間に思いを込める。
「震災で一瞬にして交通網がまひし、多くの命が失われた。その事実をいつまでも覚えていてほしい」
◇ ◆
「ゴーン」。毎日、午前5時46分になると神戸市須磨区の浄徳寺に鐘の音が響く。厳かな余韻の後、宇賀芳樹住職(84)が再び撞(しゅ)木(もく)を引く。重厚な音は6回続く。
同寺の釣り鐘は震災で砕け散り、破片を拾い集めて“再生”。2年後の1月17日、初めて震災の発生時刻に突いた。それ以降、毎日鳴らし続ける。「自分は犠牲者に何ができるのか。そう考えた時に出た答えやな」。雨の日も台風が接近する日も、撞木を手に取る。
「皆安らかになり、私たちを守ってな」。震災で亡くなった檀(だん)家(か)は9人。鐘の音の間はそっと手を合わせ、犠牲者の冥福を祈る。
今年の17日も普段と同じように、鐘突き堂へ向かう6段の階段を上る。
「風化を防ぐことも慰霊の一つ。毎朝の鐘は『震災を忘れんとってや』というメッセージでもあるわな」
22年目の訪れを告げる音が街に響く。
(田中宏樹)
【各地で追悼の音】
■早朝追悼のつどい 神戸市中央区のビーナスブリッジで午前5時半から。午前5時46分、プロトランペット奏者の松平晃さん(73)=川崎市=が唱歌「冬の夜」を演奏する。15年以上前から毎年17日を神戸で迎えている松平さんは「これからも一緒に歩んでいくという思いを音で届けたい」と話す。
■犠牲者追悼会 午前5時46分、芦屋市の西法寺で。震災直後、寺に約70人が避難し、ドラム缶で雑煮を作ったり沸かした湯で風呂を提供したりし、被災者を温めた。体験を語り継ぐため2003年、ドラム缶製の鐘を造り、今年も住民らが突く。
■自由の鐘 午前5時46分、神戸市中央区の県庁2号館で、井戸敏三知事と県の幹部職員が鳴らす。
■鎮魂と希望の太鼓 三田市のJR三田駅前で午後5時46分から30分間。同市の和太鼓グループ「三田太鼓」がオリジナル曲「鎮魂」などを披露する。(田中宏樹)
2016/1/16
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