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明石海峡大橋特集

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ジョイポート南淡路社長 鎌田勝義さん
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ジョイポート南淡路社長 鎌田勝義さん
「咸臨丸」「日本丸」が停泊する福良港
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「咸臨丸」「日本丸」が停泊する福良港

 鳴門海峡では、観潮船が気を吐く。福良港を拠点に、レトロな帆船型クルーズ船「咸臨丸」「日本丸」を運航するジョイポート南淡路は2017年度、明石海峡大橋開通時以来となる乗船者数20万人を達成。渦潮の世界遺産登録運動を追い風に、事業拡大を目指す。けん引するのは、海のない奈良県出身の元銀行マン、鎌田勝義社長(51)だ。

 渦潮見学は、淡路島に観光客が押し寄せた大正時代には定番化。ジョイポート南淡路の前身とも言える阿淡連絡汽船は1935(昭和10)年、福良-撫養(むや)間の定期旅客船事業の合間に観潮船の運航を始めた。

 「阿淡連絡汽船は85年、大鳴門橋の開通に伴い定期旅客船の運航を廃止したが、観潮船の運航はその後も続けていた。しかし95年に阪神・淡路大震災が発生。観光客が激減し、翌年解散を余儀なくされた。ジョイポート南淡路はその後、観潮船事業を福良から絶やさないために地元の有志約40人が出資して設立した株式会社だ。渦潮の価値を知る地元住民による地元のための会社。初代社長は地元寿司(すし)店の経営者、2代目は地元靴下メーカーの経営者だ」

 「3代目の私は、大阪の銀行で4年前まで経営管理部長をしていた。銀行の仕事を通して地域活性化に携わりたいと思うようになり、当社の門をたたいた」

 ジョイポート南淡路の観潮船乗船者数は2017年度(16年10月~17年9月)、20万9966人に。明石海峡大橋が開通した98年、翌99年以来の20万人越えとなった。

 「98年度の28万2401人、99年度の25万8023人以来の数字だ。この間、十数万人程度で推移していたが、明石海峡大橋の通行料金値下げやPRの強化が効き、6年連続の増加となった。肌感覚ではあるが、外国人観光客も増えている。年間3千~5千人程度は外国人だ」

 「もう1隻船を持ちたい。1隻は引退させ、福良港に着けて『スペース』として活用する。レストラン、民泊…。福良港に行けば帆船が3隻見られる-という風景をつくりたい。神戸港の開港150年記念イベントの一環で日本丸を同港に出したら、2千人以上が見学に来た。船を使った風景づくりで港に人を呼び込みたい」

 兵庫県や徳島県など、関係自治体が「鳴門の渦潮」の世界遺産登録に向けた動きを本格化させている。

 「瀬戸内海で常石グループのクルーズ船『ガンツウ』が就航したり、両備ホールディングスの『海の七つ星豪華客船』計画が発表されたりと華やかなニュースが相次ぎ、船への注目度が上がっているタイミング。この機を逃さず、飛躍を果たしたい。船はもはや日常の交通手段でなくなって久しいが、その分『非日常感』がある。船の楽しみ方はいろいろだ。ガンツウのような1室1泊40万円のものから、当社の観潮船のような1時間2千円のものまで。東京五輪の開催で観光が盛り上がるであろう2020年に向け、当社もしっかり頑張りたい」

 「いつか取り組みたいのが、福良-鳴門間での定期航路の復活だ。鳴門は福良の住民にとって、ちょっとパチンコへ、というほど身近な場所だったが、今、この区間には路線バスすらない。かつて確かにあった『南淡路鳴門文化圏』は消えてしまった。本州、四国と橋でつながろうとも、淡路はやはり島。海の道でしか、つなげないものがある」(西井由比子)

=おわり=

▽かまた・かつよし 奈良県香芝市出身。1990年北海道大学水産学部を卒業後、大和銀行(現りそな銀行)入行。近畿大阪銀行経営管理部長を経て2014年4月ジョイポート南淡路へ。総務部長、専務を経て15年11月から現職。南あわじ市福良在住。

2018/1/11
 

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