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明石海峡大橋特集

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高さ300メートルの主塔頂上からの絶景を楽しむ「ブリッジワールド」の参加者ら。台湾など海外から訪れる人も増えている=明石海峡大橋(撮影・辰巳直之)
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高さ300メートルの主塔頂上からの絶景を楽しむ「ブリッジワールド」の参加者ら。台湾など海外から訪れる人も増えている=明石海峡大橋(撮影・辰巳直之)

 音もなく上昇するエレベーターで約2分。東京タワーやあべのハルカス(大阪市)に匹敵する高さ約300メートル、明石海峡大橋の主塔頂上から見下ろす360度の絶景に、参加者の口からため息が漏れた。

 1日から今シーズンが始まった「ブリッジワールド」。道路の下層にあり、格子状の金網越しに足元の海面が見える管理通路や、主塔内部などが見学できる人気のツアー(4~11月の木~日曜・祝日)で、この日も受け入れ限度の84人が参加した。昨年は国内外から過去最多の計約1万1500人がエントリーした。

 つり橋は2本の主塔に渡されたケーブルで橋桁をつるため、塔の間の距離が長いほど高い技術力が必要となる。明石海峡大橋のそれは1991メートル。1998年の開通以来、破られていないギネス世界記録だ。

 「世界に誇る架橋技術をアピールしたい」。ツアーは技術者らのそんな思いから生まれた。無料で企画したところ大盛況で、「有料でも続けて」との声を受けて2005年に始まった。2カ月前の予約開始直後に埋まる日も少なくない。

 案内役を務めるのは、60代を中心とした約20人。ほとんどが大橋建設に携わった技術者で、当時の苦労話なども随所に盛り込む。

 ツアーのうたい文句は「世界最長のつり橋を体験しよう」。運営する本州四国連絡高速道路・神戸管理センター(神戸市垂水区)の布廣淳史副所長(56)は「技術者の詳しい説明も売りの一つ」と胸を張る。

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 日本を17年に訪れた外国人観光客は過去最多の2869万人。大橋開通時の実に7倍に増えた。

 政府が「観光立国」を掲げる中、国土交通省は橋やダムなど高い技術が詰まった大型公共施設を観光資源とする「インフラツーリズム」の旗を振る。1月には全国約270施設をPRする専用サイトをオープンした。もちろん、明石海峡大橋も名を連ねる。

 JTB総合研究所(東京)の主席研究員、中根裕さんは「インフラツーリズムに求められるのは、専門性と技術の結晶から生み出される『ホンモノ感』」と強調した上で、「世界一というほかにない強みがあるのは魅力的」と指摘する。

 ブリッジワールドの評判は海を越えた。当初は1%もなかった海外からの参加者は昨年、2割まで増加。来神した台湾人旅行者(22)は会員制交流サイト(SNS)のインスタグラムでその存在を知ったといい、「台湾人は『世界一』が大好き。夏に家族と一緒に参加したい」と話す。

 本四高速は音声ガイド機を使って4カ国語で案内している。ただ海外向けに積極的なPRなどはしておらず、評判はSNSを中心に広まっているのが実情だ。布廣副所長は「橋として本来の役割を果たすため、点検や補修などが最優先。ツアーの定員や開催日を増やすのは難しい」とジレンマを口にする。

 訪日客数で大阪や京都に大きく水をあけられて久しい兵庫。中根さんは「世界一の看板を、もっと生かせるはず」と見ている。(末永陽子)

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 明石海峡大橋は5日で開通20年となる。神戸と淡路島を結び、ヒトとモノの流れを大きく変える一方、近年は観光資産としても脚光を浴びる。節目を迎える大橋の今を探る。

2018/4/2
 

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