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明石海峡大橋特集

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せとうちクリエイティブ&トラベル社長 白井良邦さん
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せとうちクリエイティブ&トラベル社長 白井良邦さん

 瀬戸内海で昨秋、クルーズ業界注目の新造船が就航した。海を行く高級宿「ガンツウ」だ。内外装、構造はこだわりの「瀬戸内仕様」で、1室1泊40万~100万円。広島県尾道市の港を拠点に多島エリアを航行し、テンダーボートで小さな島々にも向かう。手掛けるのは、同市の地域振興会社「せとうちホールディングス」。ツアーを企画・販売する事業子会社「せとうちクリエイティブ&トラベル」を東京に設立し、国内外への魅力発信に乗り出した。せとうちクリエイティブ&トラベル社長、白井良邦氏(46)は言う。「瀬戸内の魅力は、海にこそある。この魅力を、ガンツウであますところなく見せる」-。

 事業主体、船体、価格…。どれをとっても、今最も注目されるクルーズ船だ。

 「設計に、住宅を主に手掛ける建築家・堀部安嗣氏を招いた。クルーズ船というと白亜の巨大ホテルのようなものをイメージするが、ガンツウは違う。瀬戸内に合ったスケールで、全長81メートル、客室19室、乗客定員38人と小型。外観は瀬戸内の沿岸に立つ家屋と同じ切り妻屋根とし、ゆったりとくつろげる縁側、露天風呂を設けた」

 「川船と同じ平らな船底で、客室はちょっと驚くほど水面に近い。波の低い内海だからこそ実現できた構造で、部屋と海が一体になるこの感覚は他の船では味わえない。電気推進なので、動きも滑るようになめらかだ。食事にもこだわり、寿司(すし)は淡路島の高級寿司店『亙(のぶ)』の監修とした」

 事業を手掛けるせとうちホールディングスは、造船大手・常石造船を傘下に持つツネイシホールディングスの元社長、神原勝成氏が2011年に設立。「瀬戸内の価値を創出する」事業展開で異彩を放つ。

 「江戸時代に潮待ち港として栄えた鞆の浦での空き家再生や、しまなみ海道を行くサイクリストの拠点整備、水陸両用機による遊覧飛行など、広島を拠点に地域活性化事業を手掛けてきた。目指すのは、陸・海・空からの瀬戸内の魅力発信。水陸両用機とガンツウとをドッキングさせたプランの販売も進めている。船は、常石造船が建造。常石グループを挙げてこの事業に取り組んでいる」

 「瀬戸内は古来、海を中心にあった場所。町並みも、海から見るようにできている。戦後、移動手段が車や新幹線に変わって海から離れたが、もう一度、原点に立ち返るインフラをつくりたかった」

 白井氏は、建築、アート、旅をテーマにした情報誌「Casa BRUTUS」(カーサ・ブルータス)の元副編集長。1年前、せとうちグループに合流した。

 「瀬戸内には編集者時代、取材でよく行っていた。建築、アートの集積があるからだ。これは、この文化圏の特徴だと思う。大原孫三郎氏や福武総一郎氏など志を持った経営者がいて、美術館やアート、ホテルなど国際的に通用するものをつくり地元に還元しようと努力した蓄積がある」

 「そういうことをやっていこうという神原会長の考え方に共感し、転身した。ガンツウを通して、四季折々の魅力を発信していく。このエリアが協力すれば、新しいツーリズムの在り方を示せる」

(西井由比子)

▽しらい・よしくに 横浜市出身。1993年マガジンハウス入社。建築、アート、ファッション、旅好きに人気の情報誌「Casa BRUTUS」に創刊準備から関わり、副編集長を務めた。2017年1月から現職。東京在住。

2018/1/7
 

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