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明石海峡大橋特集

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道路の下にある保守点検用の管理通路。格子状の金網の床越しに数十メートル下の海面が見える。観光面で有効な利活用策はないのだろうか=明石海峡大橋(撮影・辰巳直之)
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道路の下にある保守点検用の管理通路。格子状の金網の床越しに数十メートル下の海面が見える。観光面で有効な利活用策はないのだろうか=明石海峡大橋(撮影・辰巳直之)

 眼下に広がる輝く海、心地よい潮風。瀬戸内の六つの島々をつなぐ橋を駆け抜ける爽快感を、サイクリストたちは「空を飛んでいる気分」と絶賛する。

 本州と四国を結ぶ3ルートの連絡橋で、唯一、徒歩や自転車で渡ることができる「しまなみ海道」(約60キロ、広島県尾道市-愛媛県今治市)。全国的な自転車ブームを追い風に、10年ほど前から観光客が一気に押し寄せるようになった。

 住民の生活道として全通したのは、明石海峡大橋開通翌年の1999年。過疎や高齢化に直面していた沿道地域が目を付けたのが、「サイクリングによる交流人口増」だった。

 当初は認知度アップに苦戦したが、地域一体で数百カ所もの休憩所を設けて受け入れ態勢を整えたほか、国際大会も誘致した。魅力は次第に拡散し、空前の自転車ブームに沸く台湾など海外からも多くの旅行者が訪れるようになった。

 尾道、今治両市のレンタサイクル利用は2016年度は計約14万1千台で、10年前の4倍ほど。ガイドツアーなどを手掛けるNPO法人「シクロツーリズムしまなみ」の山本優子代表(44)は「住民とのふれあいもあり、暮らしに溶け込むような感覚を味わってもらえる」と魅力を話す。

 地域活性化に向け、訪日外国人を含む観光客をいかに「橋」で引きつけるか。しまなみ海道の成功例も踏まえ、兵庫県は18年度、徳島県と共同で大鳴門橋(兵庫県南あわじ市-徳島県鳴門市)へのサイクリングロード敷設の可否検討を始める。

     ◇

 「利用ニーズを幅広く把握し、観光目的を中心とした利活用方策を検討する」

 13年3月の兵庫県議会予算特別委員会。明石海峡大橋の道路下にある幅4・2メートルの管理通路の活用策を問われ、県はこう答弁した。

 管理通路の床は数十メートル下の海面が見える格子状の金網。11、12年度と検討した自転車や125cc以下の単車の通行については、安全性などの観点から「不可」と結論づけた県だが、歩行者の通行については一定の可能性を指摘し、「地域資源である世界最長のつり橋の有効利用を幅広く検討する」とも答えている。

 開通当初2600円だった普通車の通行料金は段階的に900円(ETC)まで引き下げられ、長らく低迷した大橋の通行車両台数はここ数年、右肩上がりが続く。10年前の1・5倍の水準まで増え、昨年8月には累計2億台を突破。「交通インフラ」としての存在感は確立されたといえる。

 一方、急増する訪日客を横目に、高さ約300メートルの主塔に上れるツアーや、神戸から淡路島まで管理通路を歩いて渡る「海上ウォーク」(年2回)のほかに、大橋に人を呼び込む新機軸の兆しはない。県の「観光目的の有効利用検討」も事実上、止まったままだ。

 井戸敏三知事は「活用に向けたさまざまなアイデアが出たが、実現のハードルは高い」。それでも「今後もあきらめずに方策を探りたい」とする。“世界一”が持つポテンシャル(潜在能力)を生かし切らない手はない。(石川 翠)

2018/4/3
 

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