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明石海峡大橋特集

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神戸・三宮の高速バスターミナルにある案内板。明石海峡大橋を経由し、淡路や四国に向かう路線がずらりと並ぶ=神戸市中央区(撮影・辰巳直之)
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神戸・三宮の高速バスターミナルにある案内板。明石海峡大橋を経由し、淡路や四国に向かう路線がずらりと並ぶ=神戸市中央区(撮影・辰巳直之)

 淡路島のホテルで働く女性(43)の通勤時間は約35分。神戸市垂水区のJR舞子駅まで1駅、その後、高速バスで明石海峡大橋を渡る。

 「神戸から大阪へ通勤する感覚と何も変わらないです」同僚の多くも本州から通う。「近くて遠い」とも言われた神戸と淡路島は、この20年で通勤・通学圏内という関係がすっかり定着した。

 1985年開通の大鳴門橋で既に淡路島とつながっていた四国も当然、神戸と“近く”なった。神姫バス(姫路市)が走らせる関西と四国を結ぶ高速バスは増便を重ね、現在は共同運行を含め1日約50往復。神戸・三宮-徳島駅なら片道1時間台だ。

 三宮のバスターミナルでは週末、到着したバスから次々に若者が降りてくる。「四国にないブランドがあるし、インスタ映えするカフェや雑貨店も多い」。徳島市の会社員(25)は2カ月に1度は神戸を訪れるという。

 一方、神戸や大阪への買い物客流出で市街地衰退に悩んできた徳島市などは近年、急増する訪日外国人客の誘致に活路を求める。

 観光庁の調査では、2017年に四国に宿泊した訪日客は過去最多の約80万人(速報値)。また国土交通省四国運輸局によると、四国を訪れる外国人客の3割弱は関西空港から入国しており、その大半は大橋を経由しているとみられる。

 飯泉嘉門・徳島県知事は「大橋開通によるデメリットより、メリットの方が大きくなった。観光面では兵庫などとも一層連携し、国内外に広くPRしたい」と力を込める。

     ◇

 「1時間なんてあっという間。空港からこんなに近いと思わなかった」

 3月下旬、関空に降り立った韓国人男性(29)は旅客船で洲本に渡り、淡路島を観光した。「食べ物がおいしいし、船旅も体験できて楽しかった。また来たいね」と満足そうだった。

 淡路関空ライン(洲本市)は昨年7月、関空と洲本港を結ぶ航路を10年ぶりに復活させた。大橋開通に伴う利用者減で07年に廃止に追い込まれたが、消費額も滞在日数も多い訪日客を淡路島に呼び込むルートとして白羽の矢が立った。

 淡路島を訪れる観光客数は近年、大橋開通前の1・5倍を上回る水準で推移するが、増えたのは日帰り客ばかり。宿泊客数は97年度の141万人に対し、16年度は130万人だった。そのうち、外国人客は5万4千人程度にとどまる。

 関空から淡路島まで、大橋を経由する陸路では最速でも2時間はかかる。海路ならその半分。島内の観光業界は「訪日客の心理的な距離感を解消できるはず」とし、大橋頼みだった観光戦略から踏み出した一歩に希望を託す。

 ただ、同ラインは年間利用6万~7万人の目標を掲げるものの、2月末までの利用者数は約1万1千人。さらに、期待された訪日客はまだ1割にすぎない。

 人口減少が加速する淡路島や四国で、訪日客誘致の成否は今や地域活性化の命運を握る。開通当初は意識されなかった役割を巡り、大橋の可能性と限界を見極める模索が続く。(末永陽子)

2018/4/4
 

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