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明石海峡大橋特集

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 「この国をつぶすつもりか」

 今年2月、衆院予算委員会。2008年度から10年間で59兆円を必要とする政府の道路整備中期計画をめぐり、岡田克也・民主党副代表は「無駄」の象徴として、明石海峡大橋を含む本州四国連絡道路(本四道路)3ルートに矛先を向けた。

 本四道路は借金で整備し、通行料で返済する計画だった。しかし、02年度、3ルートの交通量は、旧本州四国連絡橋公団の予測5万5千台(1日平均)に対し3万6千台。有利子負債は3兆5千億円に膨らみ、利払いが料金収入を上回っていた。国は03年度からの四年間に、利払いを含め1兆4700億円を道路特定財源から投入。負債を圧縮し救済した。

 「これは全部、国民が納めた税金だ。(さらに無駄な道路を造り)同じことを繰り返すのか」。岡田副代表は計画見直しを強く迫った。

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 国は今後も、本四道路の借金返済に税金を投入するが、地方も同様だ。国の計画によると、国と受益者とされる関係10府県市は12年度まで、毎年計800億円の出資金を出す。

 10府県市は1970年度以降、旧公団に、公団民営化後は借金を引き継いだ「日本高速道路保有・債務返済機構」に出資を続ける。実質、無利子貸し付けとなる出資の額は現在、最高の兵庫県が毎年38億円に達し、累計776億円。神戸市も毎年23億円で、累計473億円に上る。

 同市は戦後間もなく、当時の原口忠次郎市長が「神戸と四国を結ぶことで相互の発展を」と、明石架橋を最初に構想した経緯がある。しかし、現在の市や市民に受益者としての実感は乏しい。市道路部の中川伸一・広域幹線係長は「市として経済効果の定量的な調査はしていない」と明かし「震災後の厳しい財政下、出資金は大半を借金で工面している」と負担の重さを強調した。

 兵庫県も今、危機的な財政状況にある。国は13年度以降も国と地方の出資を10年延長するとしているが、「受け入れがたい」と県道路計画課の尾原勉・高速道路室長。「国は『地元の要望で造ったから、地元負担は当然』と言うが、ほかの高速道路は地元要望を受けても国だけの負担で造られている」と指摘する。

 国と10府県市の議論は平行線をたどる。

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 高齢者や障害者らの医療費助成、バスや地下鉄の敬老優待乗車制度…。財政難で、生活に密着した県、市の施策が削られる一方、利用が低迷する本四道路には税金が投入され続ける。

 残る借金は06年度末、2兆900億円。交通量予測は大幅に下方修正された。完済は50年3月の見通しだが、出資金は、国と地方への返済方法さえ決まっていない。

2008/4/4
 

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