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明石海峡大橋特集

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 トラックが戻ってきた。

 ほぼ10日間、マイカーと観光バスが目立った明石海峡大橋で、物流の動脈に再び血が通い、ビジネス始動を見せつけた。

 「連休が明けてからですね、大橋を使った本当の競争が始まるのは」。大手運輸会社「福山通運」(本社・広島県福山市)が神戸市須磨区に設けた物流センターのセンター長、斎藤稔さんはそう言う。

 センター東には、大橋につながる西神自動車道が通る。橋を渡って神戸に入ったトラックが、西日本を貫く”物流の大動脈”山陽自動車道へ続々北上する。

 休みが終わり、ヒトやモノが動き出した。開通直後の見物ラッシュもいったん落ち着く。「仕事が本格化するこれから、橋をどう生かすかが問われる」とセンター長は続けた。

 「うちは1カ月で、メリットをほぼ実感できた」

  ◇   ◇   ◆

 大橋に近い神戸市流通団地に、同社が関西最大級の物流拠点を新設したのは昨夏。四国への物流が瀬戸大橋から明石海峡大橋へシフトする先例と注目された。が、同社をも驚かせたのが、開通1カ月の橋通行のスムーズぶりだった。

 「いわば淡路島全体が観光の『う回路』になった」と斎藤さんは分析する。

 橋を渡ったバスやマイカーは島内で降り、上の高速道路がすく理屈。「瀬戸大橋では見られなかった」と言う。神戸・徳島間はフェリー利用の3時間から一挙に1時間まで短縮され、「明石ルートへのシフトは確実に加速する」と見る。

  ◇   ◇   ◆

 時間短縮、コスト減、天候に左右されない安定輸送…。橋のメリットをどう見いだすか。海を渡った流通ルートには、見えないビジネスチャンスも潜む。

 予想もしない客層の広がりに目を見張るのは、開通直後、神戸市垂水区に代理店を開いた健康食品の宅配会社「ディーエフ」(本社・徳島市)だった。

 代理店オープンに向け、新聞チラシで呼びかけた神戸での試食会には、阪神・淡路大震災後の復興住宅に関係するヘルパーや医療関係者の姿が目立った。

 「公営住宅のお年寄りに宅配は可能ですか」。照会はいずれも仮設住宅から移った独り暮らしや高齢者夫婦への配食サービスだった。

 本業は糖尿や高血圧など成人病を懸念する人へのバランス食の提供。工場から神戸の住宅へ直接配達が橋で可能になった。それでも関野良雄営業課長は、「予想したのは都市部での健康食の需要。被災地の現状までは眼中になかった」。

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 橋開通は経済や地域振興にどう影響するのか。膨大な借金を抱えた本四公団経営は巨大橋で好転するか。明確な答えはまだない。

 開通に合わせ神戸支店を出した徳島銀行は、「進出を検討する企業も景気低迷で模様ながめ」といい、新たな複合産業団地を神戸市西区に持つ神戸市も「4月に物流用地の問い合わせは10数件。でも具体的な動きはまだ…」とする。

 期待と不安、競争とチャンス。先行き不透明な景気も加わり、開通後の行方はまだ読み切れない。

1998/5/7
 

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