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明石海峡大橋特集

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大阪府岬町長 田代堯さん
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大阪府岬町長 田代堯さん
かつて旅客船、フェリーが発着していた深日港。今は釣り人しかいない=大阪府岬町
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かつて旅客船、フェリーが発着していた深日港。今は釣り人しかいない=大阪府岬町

 大阪湾では、大阪府岬町が深日(ふけ)-洲本航路の復活を熱望する。目指すのは、ミッシングリンク(欠けた部分)の解消による広域文化圏の形成だ。淡路・四国と泉州・和歌山との行き来を船で仲介し、さびれた港ににぎわいを取り戻す-。田代堯(たかし)・岬町長(74)は、航路復活を地域再生の切り札と位置付ける。

 かつて、洲本、津名、由良、友ケ島、徳島の各港間に定期航路を持っていた深日港。明石海峡大橋の開通を経て、2007年までに全航路が廃止となった。

 「航路の廃止と並行して、事業所、人の流出が進んだ。関西電力多奈川第2発電所の事業停止は、その象徴的な出来事だ。岬町はもともと大阪北部、和歌山市のベッドタウンで目立った産業はないが、町はどんどん活気を失っていき、『陸の孤島』とまで言われた。当時私は町会議員で、航路存続を強く訴えたが時代の流れは止められなかった」

 「私がこの町へ移り住んできたのは1966年ごろ。その3年後の航路の利用者数の記録があるが、洲本航路が年間約42万人、由良航路が約5万人。私自身、洲本航路にはよく乗った。ゴルフに行くときも、一杯飲みに行くときも。高速艇で25分くらいだったから、気軽なものだった。それが今や、車で3時間半かけないと行けない場所に。淡路島側からは、魚や野菜の行商の人が多く乗っていた。利用者は年々減っていったが、人の行き来があった分、活気があった」

 2017年、国の「船旅活性化モデル地区」に指定された。

 「関西空港に降り立つ訪日外国人観光客(インバウンド)を南へ誘導し、紀伊半島から淡路島、四国へと巡る新たなルートに取り込む狙いだ。国は20年までに、インバウンドの数を現状の2倍の4千万人に拡大させる目標を掲げている。紀伊半島には熊野古道が広がり、四国にはお遍路がある。淡路島は観光地が多い。船を介して一体的な観光エリアとして示すことができれば魅力は高まる」

 「岬町も、みさき公園だけではないことを知ってもらいたい。寺社は多いし、内部に入れる古墳だってある。高台に整備した『道の駅みさき』は見晴らしがよく、好評だ。インバウンドだけでなく、淡路、四国方面から気軽に旅行に来てもらいたい」

 17年6月下旬から約3カ月間、深日-洲本間で試験運航を実施。今年また、試験運航に臨む。

 「期間中、利用者数は1万人を超えた。この数字は大きな成果だと思っているが、国の補助がなければ赤字だった。再度の試験運航実施を決めたのは、一年を通してこの調子でいけるとは思っていないからだ。17年の実施期間は、海も安定している行楽シーズンだった。19トンの小型船なら採算がとれるという見立てもあるが、違う時期にも実施して、採算性を見極める必要がある」

 「和歌山-徳島間にフェリーがあり、競合するので現実的ではないが、深日-洲本間でミニフェリーを走らせたい思いもある。洲本にはもうすぐ神戸淡路鳴門自動車道のスマートインターもできるので、実現すれば便利に使ってもらえるだろう。航路があった時代、1日は出港する船のドラで始まり、ドラで終わった。港町に活気を取り戻すためには、航路の復活以外に方法はない。これは私の長年の夢で、ライフワークだ」(西井由比子)

▽たしろ・たかし 宮崎県串間市出身。同市立市木中学校卒業後、尼崎市の三菱電機研究所勤務を経て大阪府岬町で電機店を設立。1987年から同町会議員。議長などを歴任し、2008年から現職。現在3期目。同町在住。

2018/1/9
 

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