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明石海峡大橋特集

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 4月5日の開通から1カ月たった明石海峡大橋の通行台数が4日、当初の予想より早く100万台を突破した。さらに兵庫県警高速隊の1カ月間のまとめによると、新たに開通した44・3キロの神戸淡路鳴門自動車道で起きた事故のうち、実に3割が淡路サービスエリア1カ所で発生。大橋を通る車のいびつな”一極集中”ぶりが事故統計でも浮き彫りになった。

 同隊によると、大橋の開通以来の交通量は、4日午後5時時点で100万6421台。1日平均では3万3548台で、本州四国連絡橋公団の当初予測1日3万台を上回った。

 事故総数は、大橋開通と同時に供用を開始した区間で計43件。うち41件は物損事故で、人身事故は2件、けがも軽傷の6人にとどまった。

 事故の種類は追突が19件で最も多く、接触14件、自損7件と続く。追突が多いのは、眺望に見とれたためのわき見が原因という。

 事故が13件と多発した淡路サービスエリアは、神戸から阪神、南紀方面まで見渡せる眺望が魅力で、休日などは満ぱい状態。このため、駐車場の空きスペースを探しながら運転していたための接触などが多いという。そのほかにも料金所で5件の事故が起きており、停車場所が危険-という傾向がくっきり出ている。

 一方、交通違反の検挙件総数はシートベルトの未着用を除き685件。半数は速度違反だったが、大橋上での駐停車6件、路肩走行5件と、やはり”見物”が原因のものもあった。

 ▼ブームの行方/景気低迷、皮肉な追い風 

 「岡山」「相模」「名古屋」…。全国のナンバープレートが駐車場に並ぶ。むろん近畿圏の車が大半だが、とりわけ観光バスに遠方が目立つ。開通以来初の大型連休が後半に入り、傾向はさらに強まった。

 「うれしいです。怖いと思う時さえあります」

 野島断層を公開する「北淡町震災記念公園」(津名郡北淡町)で、総支配人の中谷欽輔さん(61)は、開通来の盛況ぶりを振り返る。

 1日の入場者は最高で1万7千人を記録し、これだけで町民人口の1・5倍。当初の年間目標だった「入場30万人」を開館1カ月で上回る勢いだ。仮設トイレを増設し、看護婦も常駐させた。畑の中にぽっかり出現したドームに向け、細い県道で大型観光バスが連なる姿が、北淡路の新しい風景となった。

  ◇  ◇  ◆

 「微風に乗った、という感じ」。好調な淡路島観光を近畿日本ツーリストの担当者はそう表現する。

 「低迷する景気の波に、淡路島観光がぴったりはまった。とりあえず大橋を渡ってみたい人にとって、割安で手ごろな目的地になっている」

 海外旅行より手軽な国内旅行。北海道や九州より「安、近、短」の近場の観光地。景気に左右された観光のかすかな流れが、追い風になっていると分析する。

 「安い日帰りパックから埋まり、同じ値段なら、より遠方で見どころの多いツアーが人気」(JTB担当者)ともいう。洲本など淡路島内では、宿泊も好調ながら、とりわけ日帰りの昼食客が殺到する。観光旅館に、幹線沿いの飲食店に、列ができる。

 ライバルの徳島でも、市内の日本観光旅館連盟宿泊案内所は「バスでやってきて、滞在3時間以内の日帰り客が増えたね」。あくまで観光は橋が目当て。「せっかく徳島まで来たから、何か見て帰ろ、という”ついで”客ですね」

  ◇  ◇  ◆

 橋の珍しさと、近場の割安感-。開通前、観光資源の数や質から劣勢が予想された淡路観光が、四国と互角に競った1カ月は、ブームの中身を浮き彫りにし始めた。それは行方を占う不吉な予感とも重なる。

 10年前に開通した瀬戸大橋は、橋の求心力のはかなさを現した。開通年度1千万人に倍増した香川県への観光客は翌年から落ち込み、すでに600万人まで減少した。「橋観光だけでは長続きしない。いつでも飽きられる」と観光業者は警告し、「訪れた人が2度、3度と来たい観光地にしなければ」と指摘する。

 観光資源の充実、イベントの開催、きめ細かな情報発信に、もてなしの心とリーズナブルな値段…。何がリピーター定着につながるのか。手探りの模索のなかで、ブームは走りだした。

1998/5/5
 

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