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明石海峡大橋特集

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 神戸から淡路に向け、渋滞は一時、7キロに及んだ。初の大型連休を迎えた明石海峡大橋は3日、開通以来最大の混雑を見せた。しかし、大橋人気と観光ラッシュに支えられた連休のその繁盛ぶりこそ、関係者の危機感につながっていた。

 「この状況では、収入は伸びない。建設費借り入れの償還計画に、狂いが出てくる恐れもある」

 連休谷間の5月1日。本州四国連絡橋公団が発表した「4月5日開通後の交通量」はさまざまに受け止められた。大橋の通行は計76万9900台。1日平均、3万100台は公団予測を上回ったが、専門家は「神戸・鳴門ルート全線の利用を見落としてはならない。全体を利用してもらって、初めて想定通りの収入になる」と指摘する。

 神戸から四国まで全線の交通量は1日平均9900台にとどまり、予測の1万7千台を大きく下回った。

 交通促進を狙い、低い通行料を設定した公団の料金諮問委員も務めた専門家は、橋自体の交通量を「経済が停滞し、天候不順が続いた状況を考えれば、健闘」としながらも、「利用区間」と「平日交通量」のいびつさを警告する。

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 1日発表の交通量を見ると、土、日曜の交通量は平日の2倍。観光が押し上げた形で、「開通直後のバブル現象」との声もある。

 瀬戸大橋では、開通の1988年度に1万1000台だった1日平均が、翌年には16%マイナスの9千台に減少した。公団は「淡路はイベントが続く。観光需要はしばらく続く」とするが、その先は見えない。

 さらに1日1万台にも届かない神戸・四国の交通量は収入伸び悩みの致命傷になる。「不景気と四国の交通網未整備が痛い」と公団は言うが、現状は「橋を見て、通って、引き返す人」が大半を占めている。

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 「詳細な利用実態が知りたい。フェリーにはどれだけのトラックが残っているのか」。公団内部にも危機感は漂う。

 「初夏にも、橋や道路の利用状況を調査する。だれがどんな目的で橋を使っているか、分析したい」

 例年秋に予定される「利用調査」の前倒し実施は、懸念の裏返しである。「結果を見て、販売強化したい」。狙いは固定需要を生む物流業界だ。

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 「行楽客で時間待ちが出た連休から、ガラリ様変わりです」。一方のフェリーも状況は厳しい。減便で再出発した甲子園フェリー(西宮・津名)は当初、「橋の渋滞は深刻」と予測し、大阪に近い地理条件も含め「貨物はそれほど逃げない」と見た。

 が、70%と読んだ残存率は50%前後。なかでもトラックは4割まで落ちた。思惑は外れ、割引による起死回生を模索する。

 貨物はどう動くのか。物流はまだ定まらない。

 「1日以降、徳島からの荷物はすべて大橋経由にした」(四国ヤマト運輸)という業者の一方で、日本通運四国支店(高松市)は「多少の時間短縮はあまり意味がない」。全体で通行料がかさむ大橋ルートより、安いフェリーをそのまま使い、様子見を続ける。

 「もっと貨物はシフトしてくる」と見ていた公団と、「もう少し残る」と思っていたフェリー。先行き不透明な経済のもと、物流全体のパイは減少傾向を見せ、奪い合いが激化する。

1998/5/4
 

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