エッセー・評論

木皿食堂

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撮影・木皿泉

撮影・木皿泉

 年末までに仕事が片づいたことがない。なので正月から仕事をせねばならない、というのがここ10年ぐらい続いている。大掃除もできないし、おせち料理は買ってきたものですませるので、晴れ晴れとした正月らしい気持ちになったことは久しくないというわけだ。

 書く仕事だけで食べられなかったとき、パートをしていて、年末になると深夜まで残業をさせられていた。40歳を超えてもまだそんな生活をしていて、スーパーの魚屋で大晦日(おおみそか)、ぎりぎりまで使っていた魚を並べるプラスチックの大きなパレットを一枚一枚洗うのだが、これがけっこうな数で、骨の折れる仕事だった。要領のよい同僚や正社員たちは早々と家に帰り、その年いっぱいで退職するという18歳の青年と2人で、黙々と洗い続けた。時計を見ると、そろそろ紅白歌合戦の勝敗が決まるころだった。流しっぱなしの水は冷たかったが、私は楽しかった。まるで倉本聡が描くドラマのワンシーンのようだったからだ。青年は、いろいろあったはずなのに、会社の悪口を一切口にせず、へらへらと笑っていた。ようやく仕事を終え、家に帰って風呂に入っていると、近所にある禅寺の除夜の鐘が聞こえてきて、ようやく大晦日らしい気持ちになり、私もあの青年も、ここから始まるんだと思った。その3年ほど後、筆一本で食べられるようになるわけだが、あのときほど新年に相応(ふさわ)しい過ごし方をした年はないように思う。

2017/1/8

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