エッセー・評論

木皿食堂

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撮影・木皿泉

撮影・木皿泉

 小学校2年生ぐらいのときだったと思う。学校が終わった後、どこかで遊んで帰りが遅くなった。玄関で母が「あんたどうしたん」と驚いた。胸元を見ると、白い木綿のブラウスがずたずたに切り裂かれていた。「どうしたん」と言われても、私にはなぜそうなったのかまるで記憶がない。いつもと違う場所で遊んだのは覚えている。そこに5年生の男子がいたのも、ぼんやりと記憶があり、おそらくその彼に何かされたのだろう。ほんの何時間前の出来事なのに何も覚えていない自分が不思議だった。父と兄がやってきて、これはひどいとブラウスの話ばかりした。兄が「男性恐怖症になるんちゃうか」と笑いながら言うと、父も母も「ほんまや」とつられるように笑い、この件はそれで終わった。私はブラウスをダメにしたことで怒られなかったことに安堵(あんど)した。男性恐怖症の意味は、聞いても教えてくれなかった。その日、布団の中で、そうか私は男性恐怖症になってしまうのかと思うのだが、それが具体的にどういうことなのか、まるでわからず、でもあの言い方は家族にとってとても不名誉なことに違いなく、そうなってしまったなら、それは私が悪いのだと思った。

 家族の中で私は一体何だったのだろう。動物の死骸(しがい)を見つけたら、それを捨てにゆくのは私の仕事だった。昔は行政が行き届かず、猫とか鳥とかが裏庭に投げ入れられたりしていたのだ。私が死骸を怖がらなかったので私の仕事になってしまったのだが、私がその仕事を好きだからやっているということになっていた。

2020/2/9

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