エッセー・評論

木皿食堂

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撮影・木皿泉

撮影・木皿泉

 バスの中、前に座っている男性の後頭部に見入ってしまった。刈り込まれた短い毛の渦になったつむじが2個あって、それはゴッホの油絵のタッチのようだった。夜明け前の空を描いた「星月夜」という作品を思いだす。男性の後頭部の空は、ゴッホが見たであろう渦巻く空気に、毛の生えていない粒状の地肌が星のように点在している。そこに、走る窓から陽(ひ)が射(さ)し込んだかと思うと、影になる。その光が、ちょうど非常口のステッカーを通すものだから、男性の後頭部は、明るい緑になったり、深い灰色になったり、目まぐるしく変わる。その様が美しい。ゴッホの絵と同じぐらい美しいと思うのは、男性の後頭部の肌が生きているからだろう。

 テレビの中で、柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さんという染色作家が、宅配便の送り状を引っ繰り返し、ほうら面白いでしょうと見せてくれた。送り状の裏は、必要な箇所だけカーボンが貼り付けてあって、その黒い部分が日常ではあまり見かけないユーモラスな形になっている。それを見せられた私は、ふいをつかれる。美しいものは気づかないと見えてこない。

2020/6/7

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