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風景を読む

風景を読む まちかど文化遺産紀行

 叙事、叙景、叙情。いま眼前に広がる風景に目を凝らし、表層と古層を行き来すると何が見えてくるだろう。記者、大学教授、カメラマンが兵庫のまちかどを歩く。

温泉寺の隣から延びる湯泉(とうせん)神社参道。夕暮れ時は湯の町らしく灯籠に明かりがつく=神戸市北区有馬町(撮影・三津山朋彦)

■病を癒やす霊地の泉 2015年に公開された濱口竜介監督「ハッピーアワー」は、5時間20分という長い ...

早朝、神戸港に入港するクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス。埠頭のコンテナ群をかいくぐるように進む=神戸市東灘区の六甲アイランドから(撮影・三津山朋彦)

■感染症超えてきた海港都市 神戸港に寄港した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を遠望した。 ...

坂越のシンボル生島の眺め。手つかずの原生林は初夏のこの時期がもっとも美しいという=赤穂市坂越(撮影・三津山朋彦)

■進取の気性はぐくむ風待ちの浦 いつかまた見たいと念じてきた風景に再び身を置く。赤穂市坂越(さこし)。 ...

鈴の森神社のヤマモモ(中央)は町内最大の大樹。木登りの苦手な柳田は狛犬(こまいぬ)に乗り、木を眺めていたという=福崎町西田原(撮影・三津山朋彦)

■替わり続ける民俗学の故郷 JR姫路駅から播但線で約20分、福崎駅で降りる。広々とした駅前広場に定期 ...

神戸ファッションタウンを担った企業のビル群には明かりが消えた建物もある。手前の緑地には大型スーパー「バンドール」があった=神戸市中央区港島中町6(撮影・三津山朋彦)

■再生期す都市、青春の面影 ポーアイ。口にすると軽やかな響きだが、造成に投じられたエネルギーはすさまじい。 ...

新しいビルが林立する阪急西宮北口駅付近にも昔の風情を残す一角がある。居酒屋が並び、人々が路地を行き交う=西宮市高松町(撮影・三津山朋彦)

■異なる背景の人生交差する街 阪神間の中核、兵庫県西宮市。その発展は20世紀初頭、近世以来の都市空間 ...

真っ赤に熱した玉鋼を鎚(つち)で打つ明珍宗裕さん。飛び散る赤い火花がほおを照らす=姫路市夢前町新庄

■時代を変えた「たたら製鉄」 鳥取駅前を歩くと「国道29号 姫路」の標識に出合う。 ...

白い砂浜に松の緑が映える。旅館を訪れた観光客らは知らず知らず波とたわむれる=洲本市海岸通1、大浜公園

■至福の情景映す古い街並み 瀬戸内海に浮かぶ三角形の島・淡路島は、三つの頂点のそれぞれに港町(岩屋、 ...

運河沿いに立地するミヨシ油脂神戸工場。蒸気や原料油を運ぶパイプが縦横にめぐる=神戸市長田区苅藻通7

■神戸支える共生のエネルギー パイプとタンクの森を歩いているようだ。鈍い銀色の管が縦横に走り、タンク ...

玉津健康福祉ゾーン付近の丘陵地には、野鳥が憩うため池や雑木林など、今なお荘厳な自然が残されている=神戸市西区玉津町水谷(撮影・三津山朋彦)

■光と闇 往還する文学の記憶 古来、「明石」は今よりはるかに広域を指す地名だった。 ...

阪急塚口駅南側にそびえるさんさんタウン1、2番館(上)。活気のある街並みと調和している=尼崎市塚口町1から(撮影・三津山朋彦)

■消費文化の街に昭和の面影 S・S。アルファベットのSを二つ並べてデザインした赤のシンボルマークがビル上部に見える。 ...

須磨浦から塩屋に長い海岸線が続く。月の明かりが波打ち際に光跡を引く=神戸市垂水区塩屋町1から(撮影・三津山朋彦)

■海を想う人々の系譜刻む 在原行平、菅原道真、光源氏、平家一門。須磨は畿内と畿外の境界に位置する歌枕 ...

大阪空港周辺では飛行機を大写しできる撮影場所が多い。住宅地が入るアングルは騒音問題も内包する=伊丹市藤ノ木1から(撮影・三津山朋彦)

■「明日はえぇ日」を信じて 住宅地のあちこちにフェンスに囲まれた空き地が虫食い状に広がっている。 ...

林の中にたたずむ墓標群。墓碑銘には第2次大戦以前に亡くなった陸軍軍人の名が記されている=丹波篠山市沢田(撮影・三津山朋彦)

■にぎわいに潜む苛烈な記憶 黒豆や丹波栗を生産する「農都」、立杭焼の伝統を持つ「陶郷」、武家屋敷群、 ...

午前7時から午後9時まで次々と離着陸する大阪(伊丹)空港。旅客機がごう音を響かせながら猪名川の土手を飛び越えていく=伊丹市中村から(撮影・三津山朋彦)

■時代のうねりを超えて 空港をイメージした歌は幾つもある。中森明菜「北ウイング」(1984年)は成田 ...

住宅地の中には地蔵や石碑が随所に見られる。観光客が集まる場所とはまったく異なる空間がある=豊岡市城崎町湯島(撮影・三津山朋彦)

■寄る辺なき女たちを引き受けて JR山陰線の城崎温泉駅(兵庫県豊岡市城崎町今津)をおりて駅前広場を左 ...

砂山を思わせる原料糖の山。巨大な倉庫は高さ30メートルに達する=神戸市東灘区深江浜町、三井製糖神戸工場(撮影・三津山朋彦)

■海と工場直結、究極の効率生産 「日本初の食品コンビナート」が神戸東部第4工区にある。 ...

建築家村野藤吾氏の設計によるカトリック宝塚教会。敷地内に「ベルナデット」と記された少女像が置かれていた=宝塚市南口1(撮影・三津山朋彦)

■連隊が紡ぎ出す「虹色の街」 「歌劇の街」として名高い兵庫県宝塚市は小林一三による郊外開発でつくられた街である。 ...

古城を思わせる上田池ダムの頂上部=南あわじ市神代社家(撮影・三津山朋彦)

■先人の情熱 大地を潤す 天端(てんば)と呼ばれるダム最上部の通路は、夏の日差しに輝く緑の天空回廊のようだ。 ...

姫路の詩人やアーティストのサロンとなっているブックカフェギャラリーの「クワイエットホリデー」=姫路市本町

■折り畳まれる歴史の痕跡 今の姫路でもっともにぎやかなエリアは、JR姫路駅北側の、大手前通りの左右に ...

多木化学の「多木浜洋館」。通称、あかがね御殿。1階の大広間は豪華きわまる。格天井には肥料会社らしく鮮やかな植物レリーフが浮き出る。壁面クロスは西陣織だ=加古川市別府町東町(撮影・三津山朋彦)

■咲き誇る肥料王の夢 これほど濃密に創業者の情念を宿している建物はそうないだろう。 ...

如意輪寺の石段下に椎名麟三が9~15歳まで過ごした旧居が今もたたずむ。夕暮れ時、屋根瓦の向こうに月が浮かんだ=姫路市書写(撮影・三津山朋彦)

■流離するヒロインの休息地 現在の姫路市街は、近世初期に築城された姫路城を中心とする城下町がベースになっている。 ...

人工の砂浜をもつ高砂海浜公園は、造成されてから約40年が経過した。公園からは松林越しに対岸で稼働する工場の様子が見える=高砂市高砂町向島町から(撮影・三津山朋彦)

■環境の世紀に未来を重ねて 臨海部に広がるカネカ高砂工業所の奥部にいくつもの塩の山がそびえる。 ...

市場の精肉店にはさまざまな蒸し豚料理が並ぶ。店内に南国の風が吹く=神戸市長田区二葉町2、マルヨネ本店(撮影・三津山朋彦)

■逆流の中で築いた暮らし JR新長田駅南側、広い空の下の駅前広場。地下鉄の駅と直結し、合同庁舎の移転 ...

川端に風情のある土蔵が並ぶ。1810年建築の登録有形文化財「瓜生原(うりゅうばら)家住宅」はそばなどが味わえる=兵庫県佐用町平福(撮影・三津山朋彦)

■文化溶け合う境界の魅力 山陽線上郡と因美線智頭(ちず)を結ぶ智頭線は計56・1キロ、計14駅の短い ...

チャップリンの姿が影絵となりまちの入り口に立つ。映画の王国がここにあった=神戸市兵庫区新開地6(撮影・三津山朋彦)

■賑わいの記憶が甦る瞬間 神戸市兵庫区に位置する「兵庫津」。15世紀には当時の文化的最先端だった禅宗 ...

平日の朝、金融機関の担当者が手形を持ち寄り、交換する。作業は集中して行われ、短時間で終わる=神戸市中央区江戸町、神戸銀行協会(撮影・三津山朋彦)

■経済の「血液」滞ることなく 経済の血液であるお金が社会の隅々にまで流れていく。毛細血管のごとく張り ...

数十もの国際航路で世界を結んだ神戸港。内外の船が多数停泊していた新港地区は夜になるとミナトらしい顔を見せる=神戸市中央区(撮影・三津山朋彦)

■見えない越境者を包み込む 戦時下の海港の歴史は、国家とそれに抗する人々のせめぎあいのドラマを秘めている。 ...

建設から半世紀を経た現在でも、杭瀬団地は入居希望者に人気だ。青空の下、住民が丹精する専用花壇は花や野菜があふれていた=尼崎市今福1(撮影・三津山朋彦)

■成長の光と影を宿して 神崎川の下流、左門殿(さもんど)川に分岐するあたりに広がる杭瀬に来ると不思議な気分にとらわれる。 ...

かつて公開され観光客でにぎわった異人館跡。敷地内に白雪姫とこびとたちの像が残されていた=神戸市中央区北野町(撮影・三津山朋彦)

■移民2世の青春の陰翳 リニューアルした阪急神戸三宮駅東口を出て、サンキタ通りと山手幹線を横切って北野坂に入る。 ...

神戸市中央区割塚通1、2(中央)で合流し、ともに三宮方面に向けて延びる阪急とJRの高架線=神戸市灘区から(撮影・三津山朋彦)

■アーチに宿るモダンの精神 三宮へ向かう阪急は神戸市灘区の王子公園駅の手前で高架に切り替わる。

【大安亭市場】南口から望む。店舗の名が書かれた照明が鮮やかに浮かび上がる。古い神戸の街並みやにぎわいをほうふつとさせる=神戸市中央区日暮通4、5(撮影・三津山朋彦)

■刻まれた激動の生活史 阪急、JR、阪神、神戸市営地下鉄の四つの鉄道が乗り入れるターミナル三宮の再開

高台の清正公園から温泉街を見下ろすと、屋根に雪を乗せた民家が身を寄せ合うように並んでいた=新温泉町湯(撮影・三津山朋彦)

■山間にたぎる大地の恵み 「湯村は生活に溶け込んだ温泉地」と老舗旅館「井づつや」の社長丸上宗慈(そうじ)(45)が話す。

西郷地区の入り組んだ小路で酒造メーカーの大きな屋外タンクに行き当たった。阪神・淡路大震災までは酒蔵の黒塀が続いていた。近くには沢の鶴資料館もある=神戸市灘区新在家南町5(撮影・三津山朋彦)

■孤独慰めた「瞼の街」 18世紀上方の俳人・与謝蕪村に「菜の花や摩耶を下れば日の暮るる」という句がある。

平成初期まで車両基地などの鉄道施設が集まっていた場所を再開発し、建設された姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめじ」。神殿を思わせる1階部分の広場にクリスマスツリーが飾られている=姫路市神屋町(撮影・三津山朋彦)

■文化の響き市民の力で 3層バルコニー形式の大ホールには兵庫県内最大級の2010席がそろう。

本山地区を東西に貫く山手幹線の両側には店舗の入ったマンションやビルが立ち並ぶ。人々が行き交いにぎわう中、夕日が斜光線を投げかけた=神戸市東灘区岡本1、本山北町3(撮影・三津山朋彦)

■山々に抱かれた夕映えの街 神戸市東灘区の阪急岡本駅から石畳の岡本坂を下りると数分でJR摂津本山駅につく。

超望遠レンズでのぞくと明石海峡付近の海面は盛り上がって見える。天文科学館は灯台のようだ=淡路市富島から(撮影・三津山朋彦)

■海峡に宿る歌聖の情念 60年に1度だけ開帳されるという秘仏が明石・人丸山の月照寺にある。

汐凪橋の向こうに高層マンションが立つ。宮川の堤防(左)は高くなり水面は見下ろせない。大きな松の木がかつて海岸であった名残をとどめている=芦屋市呉川町(撮影・三津山朋彦)

■時空を超えて山から海へ 芦屋は神戸と西宮のはざまの南北に細長い市域からなり、国際文化住宅都市として

蚕を育てた養蚕農家の3階部分。床は板を渡しただけの簡素な構造。窓を閉め切ると隙間から光が漏れる=養父市大屋町大杉、ふるさと交流の家「いろり」(撮影・三津山朋彦)

■近代化の扉開いた“絹の道” 秋の夕暮れ、5年ぶりに上垣守国(うえがきもりくに)(1753~1808年)の墓所に参った。

現在の久寿川(中央)は、地下水路になって高速道路と国道43号(奥)を越える。今津公設市場は国道南側にあった=今津水波町、今津久寿川町(撮影・三津山朋彦)

■「酒都」の盛衰 生き抜き 現在の西宮市には、文教住宅都市、または阪神間モダニズムの印象が強い。

あちこちにレトロな外観の建物がある。土蔵風、タイル張り、腰石付き、銅板張りなど防火に工夫したさまざまな造りが分かる=豊岡市中央町

■都市再生の夢 世紀を超えて 斜めに走る道路を行くとロータリーに出た。直径72メートル、円周220メートル。

阪神尼崎-出屋敷駅にかけて枝分かれして広がるアーケードの下には、数多くの商店が軒を連ねる。買い物客や仕入れ客が引きも切らず、にぎわったかつての姿は今はない=尼崎市建家町

■人生の陰影 文学に昇華 阪神尼崎駅のプラットホームから海側を眺めると、150年ぶりに再建された尼崎

町中にはところどころに古い蔵やなまこ壁の土蔵が並び立つ=たつの市龍野町日山

■町並み再生 未来につなぐ 揖保川にかかる全長210メートルの龍野橋を渡ればふっと時空が変わる。

朝焼けを背景に浮かぶ大南寺の門柱と観音像。ふとベトナムの風景を思い起こさせる=姫路市四郷町坂元

■ベトナム難民の第二の故郷 市川の中流、播但線仁豊野(にぶの)駅近く、国道312号沿線の聖マリア病院

ウッディタウンのモニュメントであるセンチュリー大橋。屋根は高く幅は十分に広い。橋上は開放感にあふれる。土木学会田中賞を受賞した名建築だ

■新旧超える理想を求めて 神戸電鉄南ウッディタウン駅を出ると激しい夕立に見舞われた。

 

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