風景を読む

温泉寺の隣から延びる湯泉(とうせん)神社参道。夕暮れ時は湯の町らしく灯籠に明かりがつく=神戸市北区有馬町(撮影・三津山朋彦)
■病を癒やす霊地の泉
2015年に公開された濱口竜介監督「ハッピーアワー」は、5時間20分という長い時間をかけて、37歳の女性4人(あかり、純、芙美、桜子)の人生の襞(ひだ)を丁寧に追っていく映画だ。映画は冒頭、霧が立ち込める摩耶山掬星(きくせい)台で4人がピクニックを楽しむシーンから始まる。家庭や職場に、人知れぬ悩みを抱える4人が再び集まるのが中盤の有馬温泉のシーンだ。昼間、鼓が滝で記念写真を撮った彼女等は夜、旅館で麻雀(マージャン)(!)をしながら、お互いにそれぞれの心の奥をそっと覗(のぞ)きこむ。その後、「ずっと知ってたのに、初めて知ったような気が」した4人は、おどけながらお互いぎこちない挨拶(あいさつ)を交わし、人生のかけがえのない瞬間(ハッピーアワー)を共有するのである(その後、4人はおのおのの試練の中で、生き直すための一歩を踏み出すことになる)。
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