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まちある調査団

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コンプレッサーから噴射される空気で、タマネギはあっという間につるつるになる=南あわじ市内
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コンプレッサーから噴射される空気で、タマネギはあっという間につるつるになる=南あわじ市内

 昨年11月に兵庫県の淡路島で発覚した贈収賄事件で、思わぬ賄賂が注目を集めた。空気を圧縮して送り出す「エアコンプレッサー」。タイヤの空気入れや高圧洗浄に使われるのが一般的だが、淡路島ではタマネギの皮むきで活躍しているという。島では皮むきで生計を立てる人たちを「むきタマ業者」と呼び、淡路産のほか、なぜか北海道産や海外産も手掛けているらしい。調べると、全国3位の出荷量を誇るタマネギ名産地の知られざる姿が見えてきた。(鈴木雅之、高田康夫)

 左手には上下をカットして薄皮に切れ込みを入れたタマネギ。右手にはコンプレッサーのピストル形噴射器。「プシュッ」。空気を吹き付けると、茶色い皮がはがれ、つるつるの「むきタマ」が出来上がった。

 「阪神・淡路大震災で瓦の仕事がだめになり、これしかなかった」。作業の合間に、南あわじ市の70代男性が教えてくれた。

 日本三大瓦の一つ、淡路島の「いぶし瓦」業界は震災後、「重い瓦で家が倒れた」との誤解が広がり、廃業者が続出。瓦の汚れ落とし用だったコンプレッサーで、むきタマ業に転じた瓦業者は少なくないという。

 「淡路島ならではの業態ですね」。淡路玉葱(たまねぎ)商業協同組合(南あわじ市)に尋ねると、そう答えが返ってきた。業者は島で軽く100軒を超えるが、加工会社との直接取引で組合もないため、正確な数は把握できていないという。

 納品されたむきタマは、そのまま出荷されたり、みじん切りやパウダーにされたりして全国の食品メーカーなどへ。ブランド化された淡路産は値が張るため、加工用には北海道産や海外産がよく使われる。つまり国内外の加工用タマネギが皮むきのため、淡路島に集められるということだ。

 「京阪神に出回る海外産の加工タマネギは、大半が淡路島を介して流通している。特産地で知られる北海道や佐賀県の業者へ、皮むきして送り返す仕事も結構ありますよ」と同組合。

 正確な統計の裏付けはないが、神戸港がタマネギ輸入で全国2位を誇るのは、淡路島が近いことも要因とみられる。もちろん、農林水産省が発表する淡路島の「出荷量全国3位」の数字には、島外産を皮むきした数は含んでいない。

 ■手作業が魅力

 では、なぜ皮をむくのに淡路が選ばれるのか。その理由が、全国で珍しい「コンプレッサーを使った手作業」にあるというのだ。

 自動皮むき機を導入している工場は全国にあるが、タマネギの大きさはまちまち。皮むきする際に捨てる割合(廃棄率)が、機械だと一つ当たり15~20%に上るのに対し、ナイフで必要最低限だけカットし、コンプレッサーで薄皮のみをはがす淡路島のむきタマ業者なら7~8%という。

 さらに、廃棄物の処理価格は都市部で1キロ40円程度だが、淡路島は15円程度。加工を発注するメーカー側にとって、廃棄率と処分費用が抑えられる淡路島のむきタマは魅力的なのだ。

 淡路島のタマネギ生産は神戸の居留地で暮らす外国人から伝わり、1888(明治21)年に始まった。1964(昭和39)年には生産量が日本一となり、規格を外れた小ぶりなタマネギを加工用にまわすために皮むきする農家が増え、技術に工夫が加えられて今のスタイルになった。

 同組合の担当者は「90年代にレトルト食品が普及して需要が増え、島内のむきタマ業者はぐっと増えた」と分析。そして「熟練者が身近にいて、定年退職後に教えられて始める人もいます」と続けた。

 厚生労働省の2015年調査で、タマネギは日本人がよく食べる野菜で大根に続く2位。淡路島は全国屈指の産地だけでなく、タマネギ食文化を支える“皮むき王国”でもある。

 【淡路島を舞台にした贈収賄事件】淡路島の水道事業を担う淡路広域水道企業団の職員を昨年11月、兵庫県警が収賄容疑で逮捕。逮捕容疑は、同企業団が発注した工事の設計金額を漏らした見返りに、南あわじ市内の設備会社から小型コンプレッサー(35万円相当)を受け取った疑い。捜査関係者によると、職員はコンプレッサーをむきタマ業を始めた親族に贈っていたという。

2018/1/25

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