• 印刷

■神戸マラソンメディカル協議会・有吉孝一氏

 生まれてこの方、合計しても42・195キロを真剣に走ったことのない私だが、神戸マラソンメディカル協議会の末席に名を連ねている。医療面でもできる限りのおもてなしをしたいと委員一同、鋭意準備中である。

 マラソンで問題となるのは心停止である。長距離を走って急に立ち止まると心臓も止まることがある。下肢の筋肉がポンプ作用で血液を送り返しているのが、立ち止まると心臓に血液が送られず空打ちとなり、不整脈から心停止をおこす。ゴール後、立ち止まらずに歩かせるのはこのためである。

 過去10年間の国内マラソン競技で107例の心停止が発生し、生存率は57%。他のスポーツと比べて極端にリスクが高いわけではないが、競技人口の広がりにより年々増加している。G・マルケスの「予告された殺人の記録」は、誰にも止められなかった殺人事件の実話をもとに書かれているが、マラソン中の心停止は「予告された急病」である。一方、その蘇生率は院外心肺停止に比べて成績が良い。目撃者による心肺蘇生が有効で、AED配置を含めた医療救護体制が整備されている賜(たまもの)である。

 村上春樹は、興味深いことを述べている。「僕がいつも決めてやっているのは、最後の400mを全力疾走することです。どんなきついレースでも、どんなコンディションでも、そのときに出せる最大のスピードで全力疾走します。それは一種の礼儀であり美学だと思っているから」。マラソン中の心停止はゴール地点37%、レース4分の3以降31%と後半に多い。日本、米国とも同様である。

 神戸マラソンでは1キロおきにAEDを配置し、28・6キロ以降は500メートルおきと特に密にし、自転車AED隊も37キロ以降増隊した。ゴール地点には巡回診療チームを配置し、フィニッシュ前後の「予告された急病」に備えている。だが90日後の第9回大会では、最後まで一定のペースを守ってゆっくりゴールするのもありだと思う。

【有吉孝一(ありよし・こういち)】神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター長

2019/8/20

天気(10月25日)

  • 20℃
  • 12℃
  • 0%

  • 20℃
  • 10℃
  • 10%

  • 20℃
  • 12℃
  • 10%

  • 22℃
  • 10℃
  • 10%

お知らせ