剣菱酒造の酒蔵だった建物を改装して4月下旬にオープンした日本酒文化の発信拠点「灘五郷酒所」(神戸市東灘区御影本町3)で、蔵人が語る歴史や豆知識をさかなに酒を楽しむ「酒蔵セミナー」が始まった。5月中旬にあった初回は、剣菱酒造の白樫政孝社長が登壇。江戸への「下り酒」として灘の酒が全国区になった時代に剣菱が起こした一大ブームと、そこから生まれた、いかにも現代風な流行語を明かして左党を笑わせた。(井上太郎)
■ギネスに申請中
御影の国道43号南側の住宅街を歩くと、剣菱本社の隣に、しめ縄が目印で、神社の鳥居をイメージしたという開放的な間口が見える。左右には灘五郷にある酒蔵の菰樽(こもだる)がずらりと並ぶ。
中に入ると、長方形の店内にはテーブル席はなく、長いコの字形カウンターだけが1台ある。
ぐるっと全長約50メートル。コの字型カウンターとしては「世界最長」に当たるとしてギネス記録を申請中という。頭上からほんのり照らすちょうちん型の照明には、一つずつ異なる酒蔵の名が記される。西端の「西郷」から東端の「今津郷」までの酒蔵を順番に並べたという、芸の細かさも一つの見どころだ。
奧の冷蔵ケースには、灘五郷全26蔵、約50種類の日本酒がそろう。芦屋市で自然派の人気料理店「amasora」を営む料理研究家の池尻彩子さんがセット料理を監修し、日本酒に合う「地元」や「旬」「発酵」をテーマにした逸品を提供する。
■タピる、ケンビる
5月19日夜、カウンター席に着いた約20人を前に白樫社長は、灘五郷の酒が全国的に知られるようになった歴史を解説した。
灘五郷は、上方の畿内から江戸に運ばれた「下り酒」で名をはせた。灘の酒が江戸で売れた理由は、二つあるという。一つは、濁らない「清酒」が伊丹で発見されたこと。二つ目はアルコール添加の技術が見つかったことで「後口のキレが良くなり、それまで2、3日で腐ってしまった酒が日持ちするようになった」のが大きかったという。
剣菱の酒は300年前に、江戸で大ブームを起こしている。
発端は1702(元禄15)年。吉良邸への討ち入り前に赤穂義士が出陣酒として剣菱の酒を飲んだ、という話が広まった。
「それで1回『どかーん』と波が来た」と白樫さんは言う。「当時は『きょう、ケンビる?』という風に江戸っ子が言ってたそうです」。タピオカを飲むことを指す「タピる」、グーグルで検索する意味の「ググる」という現代の若者言葉を引き合いに、その人気ぶりをいかにも今風に解説した。
だが、長続きはしなかった。「売れる、もうかると調子に乗った。決められた製造量よりも多く作っているのを幕府に見つかり、つぶされました。コンプライアンス違反ですね」
■日本文化の守り手
その後も明治維新や関東大震災でオーナーが変遷し、今の「白樫家」は5代目に当たる。
そんな波乱の歴史を歩みながらも脈々と受け継がれてきたのが、剣菱の代名詞とも言える「古酒の技術」だ。500年以上の伝統を守る意義を語る白樫さんの表情には、固い決意がにじむ。
近年は昔ながらの酒造りに欠かせない木の道具や、製造業者がなくなってしまった「わらだる」の製造にも取り組んでおり、「うちがあきらめたら日本からなくなってしまうものばかり。酒造りを通したそれにまつわる日本文化を次の世代に残すため頑張りたい」と話した。
参加者の席には剣菱の日本酒と地場産品を使った料理が次々と運ばれ、神戸市中央区の女性会社員(65)は「へえと思うお話を聞きながら楽しく飲めた」と満足そう。大の日本酒好きという女性(38)は「小さな蔵や、そこで造られるお酒のことも知ってみたいので、また通ってみようかな」と笑顔で話した。
「酒蔵セミナー」は5月下旬に白鶴酒造生産本部の伴光博さんをゲストに招き、第2回が行われた。今後は月に1回のペースを予定している。参加費は5千円で、毎回、事前の申し込みが必要。
■仕掛け人は「べっぴんさん」の孫
灘五郷酒所は、剣菱が2019年まで酒蔵として使っていた敷地と建物を改装し、企画会社の「アリガトチャン」(神戸市中央区)に貸し出す形で運営している。
同社は19年に約3カ月間、神戸ポートタワー(中央区)の展望フロアで灘五郷の20社以上の清酒を提供する「サケ タル ラウンジ」を営業するなど、日本酒を通じた神戸の活性化に力を入れている。
社長の
広告代理店の博報堂の社員として10年ほど東京で暮らす中で「観光地としての神戸」をより良くしたいと思い立ち、帰郷して会社を興した。六甲山、六甲おろし、宮水、そして神戸港。これらに支えられて発展した日本酒文化にこそ可能性があると信じてやまない。
ポートタワーの改修に伴い「サケ タル ラウンジ」が閉鎖した後、坂野さんは、文化庁にある提案をした。
「灘五郷のPRのために、山田錦の生産地や酒蔵をめぐるツアーを企画したい」。同庁の担当者に現地を案内して売り込む中で、助言をもらった。「ツアーもいいが、まずは拠点があった方がいいのでは」
ちょうど同じころ、剣菱の白樫社長も灘五郷全体のPRを模索していたといい、両者が手を結んで灘五郷酒所の構想が生まれた。昨年10月に着工、今年1月に改修を終え、4月29日にオープンにこぎ着けた。
「歴史ある灘五郷のど真ん中に、発信拠点ができたことがとても大きい」と坂野さん。灘五郷と一口に言っても白鶴酒造や菊正宗酒造などの大手と違い、広報に人を付けられず、自社のPRさえままならない酒蔵もあるという。
今後はそうした酒蔵とのタイアップも視野に入れ、「ここを日本酒の聖地として世界に発信し、盛り上げてみせる」と力を込める。
◇
営業は金、土、日曜と祝日のみ。正午~午後9時(日曜祝日は同8時まで)。1杯400円からで、小皿料理付きの5種類の飲み比べセットは2400円。5月末までクラウドファンディングで支援を募り、返礼の一環で7月7日に「お披露目パーティー」を計画する。
詳しくは灘五郷酒所のホームページ(https://nadagogo.com/)。
→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)
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