旦旦的廿年(タンタンの20年)
7月初旬。朝の爽やかな風を浴びながら、タンタンが右手(前足)で器用に竹の葉を食べている。
はた目には、いつもの穏やかな食事風景。だが、このシーンも飼育員や獣医師にとっては貴重な「研究材料」だ。
タンタンが来園者を癒やし続ける裏側で、多彩な研究が続けられてきた。
実際、2000年の来神から20年間で王子動物園などが発表した論文は38本、進行中の研究も10件以上ある。
飼育展示係長の谷口祥介獣医師(38)が「タンタンの研究は10年目を節目に大きく変わったんです」と教えてくれた。
最初の10年間は、パートナーのコウコウとの繁殖研究が主題だった。
パンダの発情期は年に1回、排卵日はたった1日しかない。その1日をどうやって事前につかむか。パンダの〝妊活〟にとって最も大切なポイントだ。同園はその1日を「ほぼ特定」するまでに精度を高めた。
だが10年9月、2代目コウコウが人工授精の麻酔中に死亡したため、研究はタンタンの行動分析に移行した。24歳になった今は「高齢パンダ」という視点を重視している。
最近は、タンタンの利き手に関する論文を大阪大学と共同で報告。それによると、竹の葉やペレット、ニンジンを食べる時は主に右手を使うが、竹の茎を食べる時はなぜか左に持ち替えるという。
「利き手、つまり癖を把握することで、普段と違う行動や異変に気付くきっかけになる」と谷口さん。
平和な日々のタンタンは「右利き、時々、左利き」のようだ。(谷川直生)
2020/7/31-
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