旦旦的廿年(タンタンの20年)
赤ちゃんが死んでからすぐ、王子動物園は「来年こそは」と前を向いた。赤ちゃんを悼む献花台には多くの市民が訪れた。飼育員の梅元良次さん(39)は「もちろん泣いた。でも次こそは元気に育ててみせると決めた」と話す。
だが…。タンタンの出産から1年後、雄のコウコウが死んでしまった。再挑戦の人工授精のためにかけた麻酔から目覚めない。
「起きるのを待っていたんだけど、あれ? 起きないぞって…」。すぐに飼育員らが人間用の自動体外式除細動器(AED)で心臓マッサージを始めたが、体毛のせいで効果は得られなかった。
死因は窒息。麻酔からの回復途中、嘔吐(おうと)で胃液などが肺に入ってしまった。同園にミスはなかったと中国側は言ってくれたが、悔しさとやるせなさで飼育員らの気持ちはふさがるばかりだった。
その後、中国の雅安(があん)パンダ保護研究センターへ飼育や繁殖の研修に行くチャンスが巡ってきた梅元さん。二つの命を失わせてしまった悔いを胸に、言葉の通じない中国で3週間、見て学んだ。
そこで知ったのが、麻酔をしなくても日々、健康状態を確認できるハズバンダリートレーニングだ。
「正直、言葉の壁もあり、満足に勉強できたわけではないけれど、自分たちなりにやってみようって」
麻酔事故の教訓が、今のタンタンの健康管理につながっているのだ。4月19日に発表された心臓疾患の発見も、このトレーニングのおかげで麻酔をかけず発見することができた。
コウコウが死んだことで繁殖研究の道は閉ざされた。
その後、タンタンに「ある変化」が起きた。(坂井萌香)=この稿は続きます=
2021/5/19-
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