旦旦的廿年(タンタンの20年)
タンタンにはかつて「興興(コウコウ)」(2000年~02年)、「2代目コウコウ」(02~10年)と、2頭の伴侶がいた。一度出産したがすぐに赤ちゃんが死んでしまい、2代目が世を去った後は1人暮らしが続いている。
日中共同飼育繁殖研究-。中国からパンダを借りる大義名分の「繁殖」ができなくなった後も、タンタンは王子に残った。
タンタンの故郷は中国・四川省。周辺を深い山に囲まれた「臥龍(がりゅう)自然保護区」で、標高は2千メートル近くあり、真夏でも気温が25度を超えることはない。一方、神戸の夏は断然暑く、「日本での飼育そのものも立派な研究なのです」と、広報の木下博明さん(51)。
後付けの感も否めないが、それでタンタンが神戸に残れるのなら…。「繁殖」「性ホルモン」「排卵日」の言葉が並んだ研究テーマも粛々と「高齢」や「健康管理」に変わっていった。
その中に、こんな変わり種がある。目の前のタンタンが骨に見えてしまう研究である。
正確には「AR(拡張現実)技術を使った学習効果」を測る研究。神戸大学大学院の研究プロジェクトの一環として18年、動物園が場所を提供した。
共同研究者の多摩美術大(東京)が国立科学博物館の骨格標本を基にパンダの骨格の3D映像を作り、ARアプリを開発。タンタンの観覧室のガラス窓には、このARが体験できる二次元コードが張り出された。
タブレット端末のカメラで読み込むと、タンタンの画像上に骨格の映像が現れる仕掛けである。
タイヤの穴にすっぽりと腰掛け、竹を食べるタンタンは格好の教材になった。
ジャイアントパンダの前脚の骨には第6、第7の指とも呼ばれる二つの突起があり、竹をつかみやすくできている。その特殊な動きを視覚的に学べる代物だった。
ただし、これは公募で招いた小学生のみが対象の、1日限りの実験。その後、3D映像を動物科学資料館に展示すると、アンケート回答者の7割が「竹を握るパンダの手(脚)の秘密がよく分かった」と答えるなど一定の成果が得られたとするが、「以後に活用した実績や復活の予定はございません」(木下さん)。
ほぼ幻の取り組みであった。(井上太郎)
2022/2/8-
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