• 印刷
焼きたてのマカロンギョーザと、リーフレット。9色の並べる順は決まっており、リーフレットの裏面には食材を全て記載している=神戸市東灘区深江北町1
拡大
焼きたてのマカロンギョーザと、リーフレット。9色の並べる順は決まっており、リーフレットの裏面には食材を全て記載している=神戸市東灘区深江北町1
マカロンギョーザを調理、販売する新元俊子さん=神戸市東灘区深江北町1
拡大
マカロンギョーザを調理、販売する新元俊子さん=神戸市東灘区深江北町1
凍った状態のマカロンギョーザはまるでアイスクリーム。10分ほど蒸し焼きにして提供する=神戸市東灘区深江北町1
拡大
凍った状態のマカロンギョーザはまるでアイスクリーム。10分ほど蒸し焼きにして提供する=神戸市東灘区深江北町1
焼きたてのマカロンギョーザ。9色で1セットになる=神戸市東灘区深江北町1
拡大
焼きたてのマカロンギョーザ。9色で1セットになる=神戸市東灘区深江北町1
両親がかつて福岡で営んでいたギョーザ店の屋号を、神戸で復活、発展させる新元俊子さん=神戸市東灘区深江北町1
拡大
両親がかつて福岡で営んでいたギョーザ店の屋号を、神戸で復活、発展させる新元俊子さん=神戸市東灘区深江北町1

 テレビ番組に引っ張りだこの人気ギョーザ店が神戸市東灘区にある。阪神芦屋駅から西に徒歩10分ほど、居酒屋風で大きなちょうちんが目印の「大鳳餃子」(東灘区深江北町1)。カラフルな洋菓子の「マカロン」にちなんだ9個セットの「マカロンギョーザ」が売りなのだが、知名度上昇とともに「インスタ映え狙い」と決め付ける声には、店主は意を決して反論する。異色のメニュー誕生の経緯と、味と品質にこだわる専門店魂を聞いた。(井上太郎)

 ■つけダレ不要

 マカロンたるゆえんは皮の色が全て違う、見た目の華やかさにある。

 紫(ポテト)▽黄(ユズ)▽茶(すじ肉)▽白(チーズ)▽黒(イカスミ)▽黄緑(タケノコ。色はホウレンソウパウダー)▽ピンク(梅)▽緑(しそ)▽オレンジ(キムチ)。

 この9種類のセットメニュー(1080円)がマカロンギョーザだ。

 紫(ポテト)を除き、全て豚肉やキャベツ、ニンニクなどを使ったあんがベースになっている。そこに「イカスミ」ならイカ、「キムチ」ならハクサイキムチを加え、食感、風味ともに変化を付けている。

 どれもあんと具にしっかり味が付いているため、つけダレは不要。店主の新元俊子さん(62)は「何人かで好きなギョーザを取り合ったり、食べる順番をいろいろ考えたりするのも楽しいですよ」と笑う。

 ■テレビで脚光

 そんなキャッチーなメニューを、テレビ局は放っておかない。この新型コロナウイルス禍では、お取り寄せ特集に組み込まれることも多かった。

 「せやねん」「す・またん!」「ウラマヨ!」「あさパラS」「ちゃちゃ入れマンデー」「めざましどようび」「今ちゃんの『実は…』」「モモコのOHソレ!みーよ!」

 数々の人気番組で取り上げられ、マカロンギョーザは知名度を上げた。関西テレビの「よ~いドン!」では落語家の月亭八光さんが店に訪れ、新元さんにはおなじみの「となりの人間国宝さん」のステッカーが贈られた。

■「彩りギョーザ」改め

 新元さんが大鳳餃子を開業したのは1994年。最初は同じ東灘区の阪神青木駅北側で始めたが、半年後の阪神・淡路大震災で全壊したため今の場所に移ってきた。

 当初出していたギョーザはシンプルな「プレーン」とキムチの2種類だけ。イカスミ、しそ、梅と、徐々に新作がメニュー表に加わった。

 「一口ずついろんな種類を食べてみたい」という客の要望でセットメニューを始めた。「肉も野菜もオール国産。皮も手ごね。せっかくならこのこだわりを全部味わってもらいたいという一心でした」

 当初は「彩りギョーザ」と名乗った。2014年頃、お客さんの1人が「マカロンみたい」と言うので、洋菓子作りの要領で丸い型を使って抜き、形を似せてみた。これがしっくりきた。マカロンギョーザ誕生の瞬間だった。

 ■受け継いだ手作りの味

 新元さんは灘神戸生活協同組合(現コープこうべ)を退職後、神戸のレストランでデザートを開発したり、イタリアンの店で働いたりして料理の経験を積んだ。

 いつか自分の店を持ちたい-。3人の子どもを育てる間に夢をあきらめかけたが、夫の友人が阪神青木駅前の良い物件を紹介してくれた。ギョーザ店の出店を決めた。

 幼い頃、両親が福岡で営んでいたのがギョーザ店だった。1963年開業の「大鳳軒」。店で毎日皮を伸ばす親の姿をよく覚えている。店は既に廃業していた。

 大鳳軒のギョーザを復活させよう。母と、一緒に大鳳軒で働いていた叔母も誘って厨房に立ってもらい、屋号だけでなく、手作りの味も受け継いだ。

 ■炎上覚悟で

 最近、グーグルの口コミ機能に、大鳳餃子に対するこんな書き込みがあったという。

 「ここは『インスタ映え』やから、もう1回行く必要はないな」

 放っておけばいいと思ったが、新元さんは反論してしまった。

 「私たちは人生かけて、二十数年ギョーザを作ってます」

 薄いとひび割れるが、厚くすると食感が団子っぽくなる。お取り寄せ用に急速冷凍しても品質が落ちないよう、皮は微調整して延ばしている。具のうまみを逃がさずにまとめたあんを大切に手で包み、やっと一つのギョーザが形になる。

 「どれも機械だとうまくいかない」と、手作業にこだわってきた。職業病で、右手の小指は先が曲がったまま元に戻らない。

 「おいしい、まずいは、お客さんが食べて感じる結果の部分だから、厳しい言葉も『ありがとうございます』と受け入れてきた。でも、これだけは炎上してでも言っておこうと思って」

 すると、書き込み主から「すみません」「そんな思いで作ったとは知りませんでした」と、返事があった。「頑張ってください。またお店に行きます」とも。

 新元さんは言う。「向こうも悪気はなく、むしろ素直な人で良かった。顔は分かりませんが、もしまた来て下さることがあったら、『おいしい!』と言ってもらえるように頑張ります」

 午後5時~11時。正午~午後2時はテークアウトのみ販売。月曜定休。大鳳餃子TEL078・412・9837

→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)

東灘話題東灘・気になるあの店
もっと見る
 

天気(9月6日)

  • 33℃
  • 25℃
  • 10%

  • 34℃
  • 22℃
  • 10%

  • 35℃
  • 25℃
  • 10%

  • 36℃
  • 23℃
  • 10%

お知らせ