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骨董漫遊

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収集した古銭を発行年順などで整理し、コインアルバムを作る。データを書き加えるのが楽しい
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収集した古銭を発行年順などで整理し、コインアルバムを作る。データを書き加えるのが楽しい

 3年前、60歳になり新聞記者の定年を迎えた。これまで同様、骨董(こっとう)収集の情熱は冷めやらぬものの、定年で財布の状況が一変した。そんなときだった。見つけたのだ。数十円から数百円で、わくわくするお宝を。古銭である。

 偶然、足を運んだ姫路城前のフリーマーケットでのことだ。無造作に置かれた木箱の中に、「寛永通宝」「永楽通宝」に交じって「半両」と読める古銭が見えた。

 すると、40年以上も昔の高校時代の記憶がよみがえった。世界史の教科書に載っていた「半両銭」の写真である。

 期末試験に「中国の戦国時代に秦(しん)で発行され、広く使用された貨幣の名称は?」という問題が出たが、答えられなかった。あのときの正解、「半両銭」が目の前にある。店主に聞くと、「500円でいい」という。

 ざっと考えを巡らせる。中国の戦国時代は紀元前で、2000年以上を経ている。しかも教科書に載るほどの有名な貨幣である。それが、500円で手に入るとは-。もちろん、買った。

 翌週、神戸の新長田駅近くのフリーマーケットで、またもや、古銭を扱う店を見つけた。そこには、1枚数十円で買える「渡来銭」があった。渡来銭は、平安末期から江戸初期に至る約600年の間に、海外(多くは中国)から輸入された銭貨だ。

 この間、日本の政権は公式には銭貨をつくらなかったため、渡来銭が通貨として使われていた。フリーマーケットでは、中国・北宋時代(960~1127年)の貨幣「天聖元宝」が30円、「治平元宝」が80円、「聖宋元宝」が60円といった具合で、300円までの古銭を20枚ほど、まとめ買いした。

     ◇

 古銭をながめるうち、市場でいくらぐらいで売り買いされているのか、気になり始めた。日本貨幣商協同組合が編集・発行する「日本貨幣カタログ」を入手し、調べることにする。

 日本の貨幣ばかりでなく、古代中国のものや「渡来銭」の価格も載っている。ちなみに、30円で買った「天聖元宝」は100~300円だった。貨幣の状態などにもよるのだろうが、「やはり、お買い得だった」と確信した。

 その後、京都は東寺の「ガラクタ市」でも、中国の輸入銭を3枚200円で売る店を見つけた。

 私は次第に古銭の種類を増やすことに熱中するようになる。通信販売でコインアルバムを買い、集めた古銭を年代順に並べていく。お分かりいただけると思うが、これが何とも楽しい。

 次回も古銭の話を続ける。運命の出合いと衝撃の事実について、書く。

 (骨董愛好家、神戸新聞厚生事業団専務理事 武田良彦)

2020/9/14
 

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