エッセー・評論

ピアニスト牧村英里子と世界のヒトビト

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アイスランド/デンマーク人の作家シグルン。神戸ハーバーランドにて(撮影・牧村英里子)
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アイスランド/デンマーク人の作家シグルン。神戸ハーバーランドにて(撮影・牧村英里子)

アイスランド/デンマーク人の作家シグルン。神戸ハーバーランドにて(撮影・牧村英里子)

アイスランド/デンマーク人の作家シグルン。神戸ハーバーランドにて(撮影・牧村英里子)

 雨でも槍でも降らなば降らんと、決死の覚悟で私物のグランドピアノを持ち込んだ、明石城櫓横での野外公演「ときはいま~明石城人魚之巻~」。文化の日の澄みきった透徹の青の秋空は、時とともに刻々とその色を鮮やかな紅に染めてゆき、果てしなく広がる壮大な空の下での演奏は、私にとってまさにカタルシスであった。

 翌日早朝。明石城から自宅へのピアノ搬入を見届けるや、私は空港行きのバスに飛び乗った。これから3週間に渡る欧州ツアーが待ち構えているのである。

 明石城では21世紀型人魚(姫)の役柄だったが、欧州公演においては、聖なる俗「七つの大罪ー嫉妬ー」、そして俗なる俗「JAPANESE CHAMBER CABARET」の世界を表現し尽くすため、煩悩にまみれた人間に戻らねばならない。これは、キャリアと私生活の比重のバランスが取れない女と、今世紀に求められる男性像に順応できない男による、時に暴力に、しかし強い情で結ばれた「いま」を生きる日本の男女の葛藤劇。自慢ではないが、煩悩は百八では到底利かぬほど際限なく持ち合わせているので、まあ何の問題もなく切り替えられるが…。

 飛行機は定刻通りにコペンハーゲンへ着陸。今月中ばに4夜連続公演「嫉妬」を演じるため、到着したその瞬間からチームエリコと準備作業に入った。

 嫉妬、羨望、妬み。過去の亡霊たちがギュウギュウに詰まったパンドラの箱をこじ開けて、私は自らの最も醜い感情と対峙する。そう遠くない昔、私が魅せられ、靴を履くのももどかしく裸足で夜道を逢瀬に走った「聖なる魑魅魍魎(ちみもうりょう)」達は、今どこで何をしているのだろう。

 ああ、コペンハーゲン。ここに住む友達は、私の全財産である。薄っぺらい貯金通帳など、可燃ゴミに出してもよい。彼らに出逢うために生まれてきたと言っても過言ではないほど、ここで邂逅したヒトビトとの濃い繋がりは、私が全力で生きていくために不可欠な原動力となっている。

 着いて翌日の今朝は、友人の作家でグラフィックデザイナー、そしてアーティストでもあるシグルンに会った。デンマークの文化省から助成を受け、次作のリサーチのために9月いっぱい来日していたので、約1ヶ月ぶりの再会となる。

 シグルンは「七つの大罪ー嫉妬ー」でも重要な役割を担っている。人間の持つこの絶望的な原罪について私と共に先ず英語で核心に迫り、それを現地の言葉に起こすサポートをしてくれているのだ。

 コペンでの準備を一旦終え、4日後にはストックホルムへ飛ぶ。次回は、スウェーデンの首都からお届けします。

2017/11/6

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