エッセー・評論

ピアニスト牧村英里子と世界のヒトビト

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 さて、やっとの思いで帰国し、幾つかコンサートをしたところで、もう既に次のヨーロッパツアーが迫ってきている。

 渡欧直前の日本でのコンサートは、来たる7月16日(月・祝)、兵庫県立芸術文化センター小ホールでのピアノリサイタル。半年前に「飽食編」と名付けた公演で、舞台の最中にバリカンで髪を剃られて坊主になり、全てを捧げたにも関わらず私を捨てた男を素裸になって激しく詰(なじ)り、飽食の成れの果ての女を演じた同じ舞台で、今度はピアノソロ一本勝負。2歳から愛憎劇を繰り返している巨大な黒の塊と対峙する、約90分の無刀流での戦いである。

 そして翌日はベルリンに飛び、1週間で4公演というなかなかハードなスケジュールが待ち構えている。最初の公演は、在ベルリン・デンマーク王国大使館での開催が予定されている。7年住んだ古巣での公演は非常に楽しみだが、世界の最新をひた走る超絶の前衛と、岩石岩男(がんせきいわお)とでも形容したらよいのだろうか、絶対的に揺るがぬ鉄壁の伝統が絶妙なバランスで共存するベルリンでのパフォーマンスの準備に、苦心惨憺の日々である。

 ベルリンでの公演後は、また別の仕事でデンマーク、スウェーデン、そして久々にイタリアへ飛ぶ予定を立てている。ある医療関係の専門家の友人によると、私は「ワーカホリック」という立派な名前の病気であるという。私だって苦しい。乳母日傘で蝶よ花よと、箸より重いものを持ったことのない育ち、そしてこのか弱き身体で(≒ 身長171cm、趣味は筋トレ、育ち方は獅子は我が子を千尋の谷に落とす)、スーツケース23キロ×2個プラス手荷物を提げて、世界をあちこち回るのは非常に苦しい。

 1回のパフォーマンスのために坊主になり、眉は剃り落とされ、DVがテーマの公演では張り倒されて身体中痣だらけになり、どうしても必要とあれば裸になって泣いて身悶える。やはり本当に苦しい。

 しかし、体力とアイディアが枯渇してカラカラになるまでは、この職業を続けます。数多くの国でこの世の絶望的な闇を見てきた者として、しかしその上で一抹の光を追い求めたい1人の表現者としての、突き上げるような欲求がある限り。

 21世紀という時代を生きるにはどうにもこうにも暑苦しすぎる感が否めない私ですが、渡欧前に原点の原点に立ち還り、王道プログラムでソロリサイタルを開催する喜びは、想像以上に大きいものがあります。

 そこで、この拙コラムを読んでくださっているお2人3組様を先着順で、7月16日のリサイタルにご招待申し上げます。

 件名に「一日一エリコリサイタル」とお書きの上、本文にお2人様のお名前をご記入して、このアドレス(77deadlysins77@gmail.com )までお送り下さいませ。当日、受付にてご招待券をお渡しさせて頂きます。

 リサイタルの詳細はホームページをご覧下さいませ。(ホームページはこちら)

 次回のコラムは、私の古巣、ベルリンよりお届け致します!

2018/7/8

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