エッセー・評論

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帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた デンマークで最後の仕事の合間に コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない 空港内のカフェエリアも閉鎖 無事に帰国がかなった喜びをしみじみ味わう
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帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた

デンマークで最後の仕事の合間に

コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない

空港内のカフェエリアも閉鎖

無事に帰国がかなった喜びをしみじみ味わう

  • 帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた
  • デンマークで最後の仕事の合間に
  • コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない
  • 空港内のカフェエリアも閉鎖
  • 無事に帰国がかなった喜びをしみじみ味わう

帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた デンマークで最後の仕事の合間に コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない 空港内のカフェエリアも閉鎖 無事に帰国がかなった喜びをしみじみ味わう

帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた

デンマークで最後の仕事の合間に

コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない

空港内のカフェエリアも閉鎖

無事に帰国がかなった喜びをしみじみ味わう

  • 帰国直前に乗車したバスの車内。乗客が運転手に近づかないようにテープが貼られていた
  • デンマークで最後の仕事の合間に
  • コペンハーゲン国際空港の手荷物検査場。レーンが大きくカバーで覆われており、人っ子一人いない
  • 空港内のカフェエリアも閉鎖
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◆3月

【16日】

 スカンジナビア航空、最大1万人の一時解雇を実施し、本日より大半の業務を停止。同社CEOが、航空需要はほぼ消滅と発表。成田線も運休との報があり、前日の強気は何処へやら、暫し絶望感に苛(さいな)まれた。

【17日】

 スカンジナビア航空のサイトで運行状況を1時間ごとにチェックしていたが、下までスクロールしきれないほど、運行中止が決まった便が表示されている。私の成田行き直行便は辛うじて欠航リストには掲載されておらず、一抹の希望に思いを託す。ただ、ドタキャンの可能性も捨てきれないので、欧州滞在延長に備えて各所に手を打った。

【18日】

 オンラインチェックインを済ませてコペンハーゲン国際空港に向かう。電光掲示板には成田行きのキャンセルの表示はない。いつも長蛇の列をなす手荷物保安検査場は閑散とし、さらにその先のショップやカフェエリアは壁で封鎖されていて、照明も暗い。出国審査官は同僚との会話で忙しく、私のパスポートにちらりと無機質な目をやっただけで出国スタンプを押した。

 やがて搭乗の案内が流れ、私は機中の人となった。離陸までの間に友人からメッセージが入る。

 「19日以降、欧州など計38カ国からの日本人を含めた入国者について、入国制限を強化すると日本政府が明言。入国後は検疫所長の指定する場所での14日間の待機及び国内における公共交通機関使用の自粛を要請する」

 19日以降...。明日の成田着から施行されるのか。もうなるようになれの心境。それにしても公共交通機関使用の自粛となると、運転免許を持たない私は成田から自宅の神戸までほふく前進で帰宅しろということだろうか。

【19日】

 午前10時40分、成田着。この先待ち受ける、検疫所長の指定する場所での14日間の待機に備えて気合いを入れ直した。検疫を通過し、入国審査を終え、スーツケースを受け取り、税関検査を通って... と、空港到着時の流れを機械的にこなしていたら、気づけば成田エクスプレスの券売機の前にいた。どこからも誰からも何の勧告もされないまま、どうやら私はほふく前進ではなく公共交通機関を使って自宅へ戻れるらしい。こんなに緩くて日本は大丈夫なのだろうかと不信の念を抱いた。

 そして私の不信は、自宅への帰途目にした光景により、一気に憤怒へと昇格した。1歳に満たない赤ちゃん連れの母親集団が、カフェでケーキを食べながら延々と自撮りを繰り返し、それをソーシャルメディアにアップしてキャッキャッと騒いでいたのだ。ロックダウンと国境封鎖宣言、帰国の目処も全く立たない緊張の連続の1カ月を欧州で過ごした直後の私には、彼女たちが無垢な殺人鬼の姿に見えた。インスタ映えする写真を撮るために東京のど真ん中の人混みへ繰り出したのだろうか。もしあなた達の可愛い可愛い赤ちゃんがウィルスに感染して死んだら滅多打ちにしてやると殺意さえ覚えた。

 自宅にたどり着いた瞬間、日本の知人から電話があったのでそのことを話すと「まあみんな自宅に籠もりがちでストレスが溜まっているからね。仲間でカフェに集まってケーキを食べるくらい別に問題ないんじゃない?」との返事。このヒトは知人から他人へ降格したと思いながら電話を切った。

 帰宅後、私は自主的に2週間の自宅待機に入り、今は殺意や狂気の念も消えて落ち着いた気持ちで暮らしている。このコラムを書いている4月7日には日本政府より緊急事態宣言が発令されたが、欧州での嵐のような1カ月の後では「ちょっと風は強いけれど、今日もお天気ええでんなぁ」レベルの緊急度に聞こえた。

 やはり私はまだ少し欧州での恐慌を引きずっているような気がする。今から窓を開けてスーパームーンでも眺めて月光浴をしよう。

              ◇

次回のコラムでは、そもそも私はなぜ渡欧したのかについてしたためます。

2020/4/13
 

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